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FIB-SEMを用いた瘢痕およびケロイドの解析【鑑別の有用な一手段となっている】

No.4871 (2017年09月02日発行) P.53

右田 尚 (久留米大学形成外科・顎顔面外科)

力丸由起子 (久留米大学解剖学顕微解剖・生体形成部門)

古賀憲幸 (久留米大学形成外科・顎顔面外科講師)

太田啓介 (久留米大学解剖学顕微解剖・生体形成部門准教授)

中村桂一郎 (久留米大学解剖学顕微解剖・生体形成部門教授)

清川兼輔 (久留米大学形成外科・顎顔面外科主任教授)

登録日: 2017-08-30

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目的:集束イオンビーム観察装置付きの新しい走査型電子顕微鏡(FIB-SEM;電顕の3-DCT)を用いることで,これまで困難とされてきた肥厚性瘢痕とケロイドとの鑑別を行う。
方法:正常皮膚,成熟瘢痕,肥厚性瘢痕およびケロイド各5例(計20箇所)を対象とし,1例につき各3箇所,計15箇所(総計60箇所)を観察した。FIB-SEMの画像と三次元解析ソフトを用いて,線維芽細胞とマクロファージの三次元構造を描出した。その画像で細胞間同士の接触を,面状,点状,なし,の3段階で評価した。
結果:正常皮膚では,接触ありが100%(面状100 %)であった。成熟瘢痕では,接触ありが87%(面状80%,点状7%)で,なしが13%であった。肥厚性瘢痕では,接触ありが80%(面状20%,点状60%)で,なしが20%であった。ケロイドでは,接触ありが15%(面状7.5%,点状7.5%)で,なしが85%であった。
考察:正常皮膚や成熟瘢痕では線維芽細胞とマクロファージが面状に接触することで,前者の働きや増殖を後者が十分にコントロール可能な状況下にあること,肥厚性瘢痕ではその接触が点状となりコントロールが不安定になること,ケロイドでは多くのマクロファージが線維芽細胞から離れてしまいコントロール不能の状態に陥っていることが推察された。以上より,FIB-SEMは今後,肥厚性瘢痕とケロイドの鑑別の有用な一手段となりうるだけでなく,その治療法の開発の重要なヒントになると考えられる。

【解説】

右田 尚*1,力丸由起子*2,古賀憲幸*3,太田啓介*4,中村桂一郎*5,清川兼輔*6 

*1久留米大学形成外科・顎顔面外科 *3同講師 *6同主任教授 *2久留米大学解剖学顕微解剖・生体形成部門 *4同准教授 *5同教授

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