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わが国における性同一性障害診療の現状と課題【適切な処置が行えるよう,医療者と当事者間での正確な情報共有が重要】

No.4862 (2017年07月01日発行) P.51

舛森直哉 (札幌医科大学泌尿器科教授)

登録日: 2017-06-29

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性同一性障害(GID)は,身体的性別とジェンダー・アイデンティティー(性の自己意識や自己認知)が一致しないことと定義される。日本精神神経学会は「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」を刊行し,第4版まで版を重ねている1)

わが国においてもGIDの認知度や社会での理解が高まりつつある。しかし,ホルモン療法や性別適合手術(SRS)などの身体的治療が可能な医療機関は十分ではない。また,身体的治療の保険適用はなく,すべて自費診療である。GID診療を行うためには,複数科からなる診療チームを組織し,また,1例ごとに審査・承認が必要であるため,その煩雑さから参入を躊躇する医療者も数多くある。現在,日本精神神経学会,形成外科学会,産科婦人科学会,泌尿器科学会が4学会共同で,身体的治療の保険適用に向けて活動を行っている。

当事者側の問題としては,身体的治療の承認が待てずにホルモン療法を自己判断で開始したり,SRSを目的に海外渡航する場合も少なくない。適切な医学的管理下に置かれていないため,ホルモン製剤による副作用や,SRSの合併症に対する適切な処置が行われていない例も散見される。

1999年から開始されたGID研究会(現GID学会)では,当事者とGIDに関わる医療者,社会学者,法律家,教育者などが一堂に会する。医学的知見を集積・発表し,医療者と当事者の間で正確な情報を共有することが重要である。

【文献】

1) 日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会:精神誌. 2012;114(11):1250-66. [https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/journal_ 114_11_gid_guideline_no4.pdf]

【解説】

舛森直哉 札幌医科大学泌尿器科教授

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