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死後の処置を医師や看護師以外が行っても問題ないか?【医師法・看護師法上は問題なく,死体損壊にも当たらない】

No.4861 (2017年06月24日発行) P.62

黒田和夫 (横浜ランドマーク法律事務所弁護士)

登録日: 2017-06-20

最終更新日: 2017-06-20

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  • 最近,在宅死が増えつつあります。死後の処置(いわゆるエンゼルケア)はこれまで看護師が主に行ってきたと思いますが,医師や看護師以外が行っても問題ないのでしょうか。死体損壊罪に問われることはないとは思いますが。

    (東京都 M)


    【回答】

    まず,結論から言いますと,法的に問題はありません。以下,エンゼルケア(死後の処置)を医師・看護師以外の者が行うときの法的問題についてご説明します。

    まず,医師法および看護師法が対象とするのは患者(生体)であり,既に死亡した者に関しては,医師法19条の2,同20条,同21条が死体検案書等に関する作成義務および死産児に関する届出義務を例外的に規定しているにすぎません。したがって,エンゼルケアを医師・看護師以外の者が行ったとしても医師法および看護師法に抵触しません。

    次に,死体損壊罪(刑法190条)に該当するかについて検討します。同条は「死体,遺骨,遺髪又は棺に納めてある物を損壊し,遺棄し,又は領得した者は,3年以下の懲役に処する」と定めています。エンゼルケアとの関係で問題となるのは「死体を損壊し」の部分でしょう。「損壊」という言葉からは死体の一部でも,物理的に損傷を与えれば「損壊」にあたると言えるからです。しかし,仮にエンゼルケアの場合に死体に傷をつけたとしても,意図的ではないので「損壊行為」には当たらないと考えられます。

    ここで,簡単に,犯罪の成否を検討する方法を説明しますと,刑法上の犯罪が成立するためには,「構成要件該当性」「違法性」「責任」の3つのファクターを順次検討する必要があります。「構成要件該当性」とは,刑法の条文解釈を意味します。仮に「構成要件該当性」があるとしても,「違法性」「責任」がなければ犯罪は成立しませんし,「構成要件該当性」「違法性」があるとしても,「責任」がなければ犯罪は成立しません。たとえば,正当防衛であれば,人を殺しても「違法性」がないので殺人罪にはなりませんし,また正当防衛でなくても幼児の場合には「責任」がないので殺人罪は成立しないということになります。これが「構成要件論」と言われるものです。

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