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(1)認知行動療法【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.76

小林清香 (東京女子医科大学病院神経精神科臨床心理士)

登録日: 2016-09-01

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▶概要

認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)は,その効果に関する多くのエビデンスの報告とともに広く知られるようになった心理療法・精神療法である。
認知行動療法という用語の意味する内容は,その発展とともに変遷してきた。学習理論を基盤として誕生した「行動療法」は,人間の行動を環境と個体との相互作用で説明することに始まり,その発展の中で思考などの認知的活動も観察可能な変数として扱うようになった。一方で,主にうつ病患者の認知の特徴に着目して発展してきた「認知療法」でも行動療法に由来する様々な技法を用いるようになり,現在では行動療法由来のものと認知療法由来のものを明確に区別せず,総じて認知行動療法と呼ぶことが多い。近年では,認知の「機能」とmindfulnessやacceptanceという要素を重視した,第3世代と呼ばれる認知行動療法も発展してきている。

▶適応

欧米ではすでに,認知行動療法は治療ガイドラインに取り入れられている。うつ病患者においては,薬物療法単独よりも認知行動療法との併用のほうが有効であることが示されている。パニック障害や全般性不安障害,心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)などの幅広い精神疾患で,症状軽減や再発予防効果に関する有効性が報告されている。また,弁証法的行動療法は境界性パーソナリティ障害に適応され,自殺行動の減少や社会適応の促進にも効果を上げている。さらに,がんや慢性疼痛,心疾患など様々な身体的問題にも認知行動療法が用いられ,効果が報告されている。認知行動療法は小児から成人まで幅広い年齢層に適用可能であり,個人面接だけでなく,同様の問題を抱える複数の患者を集めた集団療法でも活用されている。

▶今後の展望

わが国においても認知行動療法の実践は広がりを見せているが,エビデンスの蓄積を含めてさらなる発展が期待される分野である。2010年春には,うつ病の認知療法・認知行動療法が保険適用となったことも特記しておく。

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