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ピロリ菌除菌後に抗体が陰性化しない場合の対応は?

No.4810 (2016年07月02日発行) P.59

井上和彦 (淳風会健康管理センター副センター長)

登録日: 2016-07-02

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

除菌治療後も,Helicobacter pylori抗体(ピロリ抗体)が陰性化しない場合はあるでしょうか。
便中ピロリ抗原が陽性で除菌後陰性化した人が,5年後に人間ドックで血清ピロリ抗体陽性と判断されました。便中抗原を再検したところ,やはり陰性でした。抗体は除菌後陰性化するのに時間がかかることは知っていたのですが,いつまでも陰性化しないことはあるのでしょうか。その場合の対応を教えて下さい。 (千葉県 K)

【A】

血清ピロリ抗体は永久抗体ではなく,除菌治療に成功すれば徐々に低下します。個人によりスピードに差はあるものの数年以上経過すれば大部分が陰性化しますが,一部には長期間陰性化しない人もいます。
京都市福本内科医院の福本圭志先生は,尿中抗体と血清抗体の検討(文献1)の中で,除菌既往例(除菌後の経過年数は不明)232例のうち,49例(21.1%)がEプレート‘栄研’H.ピロリ抗体(以下,Eプレート)で10U/mL以上の陽性であったことを示しています。2008年度に松江赤十字病院人間ドック内視鏡受診者で行った検討においても除菌後例(経過年数1~12年)53例のうち15例(28.3%)が血清ピロリ抗体(Eプレート)陽性でした。すなわち,ワンポイントの血清ピロリ抗体のみで除菌に成功した状態が続いているかどうかを判断することはできません。
福本圭志先生は除菌後のピロリ抗体について前値と比較して,1カ月で69%,2カ月で51%,3カ月で42%,5~6カ月で25%と直線的に低下し,その後も9~12カ月で16%,24~36カ月で10%以下と徐々に低下することを報告しています(文献2)。そして,保険診療においては,除菌治療後6カ月以上経過したところで,抗体価が除菌前の50%未満に減じた場合には除菌成功と判断できるとしています。ただし,当然のことですが,前後で同じ測定法を用いる必要があります。
現在,わが国において最も多く用いられている血清ピロリ抗体測定法はEプレートですが,そのほかにLZテスト‘栄研’H.ピロリ抗体(以下,LZテスト),スフィアライトH.ピロリ抗体が上市されています。それぞれの測定法の感染診断精度は良好ですが,各測定法間で結果が100%一致するわけではありません。
2014年度に人間ドックで192例を対象に,2種類の血清ピロリ抗体測定法(EプレートとLZテスト)を比較検討する機会がありました。血清ピロリ抗体のほかに尿素呼気試験(UBT),上部消化管内視鏡検査(内視鏡),血清ペプシノゲン値測定をすべて同じ日に行った検討ですが,その中にピロリ菌除菌治療成功後の人が17例いました。除菌後経過年数は2~10年でしたが,全例でUBTは陰性(0~1.4‰)であり,内視鏡所見も除菌成功後の状態でした。血清ピロリ抗体についてEプレートでは全例陰性(10U/mL未満)で,3U/mL未満も7例いました。しかし,LZテストでは2例は陽性(除菌5年後20.8U/mL,除菌3年後16.0U/mL)でした。
ピロリ菌除菌の目的は何か,除菌によってもたらされるメリットは何か,確認してみましょう。除菌治療により病理組織学的に胃炎が改善し,萎縮も改善傾向を示します。その結果として,消化性潰瘍の再発予防,胃MALTリンパ腫の消退,胃過形成性ポリープの縮小消失,免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)の改善につながり,胃癌発生リスク低下も期待されています。除菌治療後のピロリ菌存在の有無を把握することはもちろん重要ですが,ピロリ菌検査法はすべてにおいて100%ではありませんので,総合的に判断することが大切です。さらに,ピロリ感染胃炎が改善しているかどうか,内視鏡所見や生検組織所見で確認することも重要と思われます。また,除菌後に発見される胃癌が存在することも忘れてはならず,定期的画像検査(サーベイランス)は怠ってはならないと考えます。

【文献】


1) 福本圭志:京都消化器医会会報. 2011;27:25-30.
2) 福本圭志:京都消化器医会会報. 2012;28:37-44.

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