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若年癌患者に対する妊孕性温存療法の現状と今後の展望 【卵巣組織の凍結保存により60例の生児獲得に成功。制度の整備が進められている】

No.4828 (2016年11月05日発行) P.57

関沢明彦 (昭和大学医学部産婦人科学講座/昭和大学病院産婦人科教授)

鈴木 直 (聖マリアンナ医科大学産婦人科学教授)

登録日: 2016-11-03

最終更新日: 2016-10-31

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  • 出産の高年齢化に伴い,妊娠前に悪性腫瘍を発症する女性が増加しており,癌診療と妊孕性温存の両立をめざす「oncofertility(癌・生殖医療)」の重要性が広く認識されるようになってきています。悪性腫瘍に対する放射線療法,化学療法などの治療前に行う卵子や卵巣の凍結保存が妊孕性温存技術のひとつとして確立するなど,この分野の研究は急速に進歩しています。そこで日本がん・生殖医療学会の代表である聖マリアンナ医科大学・鈴木 直先生に,若年癌患者に対する妊孕性温存療法の現状と今後の展望について解説頂ければと思います。

    【質問者】

    関沢明彦 昭和大学医学部産婦人科学講座/昭和大学病院産婦人科教授


    【回答】

    癌の罹患率は近年増加傾向を示していますが,手術療法,化学療法そして放射線療法など癌に対する集学的治療の進歩や診断方法の改良に伴い,多くの患者が癌を克服するようになってきています。その中でも,小児思春期・若年(adolescent and young adult:AYA)世代の癌患者の5年生存率は80%以上に達しています。しかしながら,それらの治療によって原疾患は寛解するものの,一部の患者で医原性の性腺機能の低下が生じ,性腺機能不全や妊孕性消失などをきたす可能性があります。

    産婦人科医は,古くから妊孕性温存に関する診療を行ってきました。すなわち,婦人科腫瘍医による初期婦人科癌に対する縮小手術や化学療法の工夫や,生殖医療医による配偶子の保存などです。妊孕性温存の診療は通常の診療範囲内で行われてきましたが,2004年のJ. Donnez博士による若年ホジキン病患者の卵巣組織凍結・移植による初めての生児獲得の報告が本領域のブレイクスルーとなり,古くて新しい癌患者に対する妊孕性温存の診療が近年クローズアップされてきています。

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