小児内分泌の分野では,10年前と比較すると目覚ましい変化が見て取れる。
基礎研究では,ホルモン遺伝子の制御,細胞内情報伝達などを分子レベルで理解することが可能となってきたことに加え,こういった解析が日常診療の場で行われるようになってきた。臨床の現場でも,最新の分子内分泌学の知見を活用し,正確な診断と,それに基づいた診療を行うことが求められるようになってきている。
新しく開発された薬剤や治療法もある。より安定した持続性を持つインスリン製剤や,室温保存で携帯できるなど利便性の高い抗利尿ホルモン製剤の内服薬,低ホスファターゼ症に対する酵素補充療法などである。糖尿病の治療については,注入器や血糖測定においても目覚ましい進歩がみられており,血糖をモニタリングしながらインスリンポンプで持続的にインスリンを静注することが可能になってきている。この10年では,SGA性低身長症への成長ホルモン(GH)治療の適応が追加された1)ことが大きな出来事であろう。
当院では,上記のような疾患を幅広く診療しているが,中でも思春期医療には力を注いでいる。とりわけ,男子低ゴナドトロピン性性腺機能低下症で,病原性のある遺伝子の種類,変異の場所により,現在使用できるhCG,rhFSH製剤をどのように組み合わせると妊孕性に有利なのか,を検討していきたいと考えている2)。
【文献】
1) Tanaka T, et al:Horm Res Paediatr. 2011;76(6): 411-8.
2) Mizuno H, et al:Horm Res Paediatr. 2014;82 (Suppl 1):159-60.
【解説】
水野晴夫 名古屋市立大学新生児・小児医学准教授