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創薬と日本の将来:第三次坂の上の雲 【医学・薬学共同の創薬は,今後強く社会から要請され,世界に貢献できる業務となる】

No.4804 (2016年05月21日発行) P.55

野元正弘 (愛媛大学薬物療法・神経内科教授)

登録日: 2016-05-21

最終更新日: 2016-10-26

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現在の日本の医療で,これまでの時代と最も異なる点は,新しい治療の開発である。改善できない病状や疾患に対して治療の工夫はこれまでも進められていた。しかし,近年は薬学分野の発展が著しい。江戸から明治に入り薬師は医師となり,草木で作製していた薬は海外から導入するようになった。同時に薬を管理する薬剤師も設けられた。日本の近代化と産業の発展に伴い,繊維業などの軽産業(第一次坂の上の雲),次にラジオ,テレビなどの電機産業,さらに自動車産業が発展し,世界に貢献してきた(第二次坂の上の雲)。これらの産業は現在,東南アジアやインド,またアフリカの産業として発展しており,自動車産業も主要な活動の舞台は海外となっている。
一方,薬学も大きく発展し,新しい薬を生み出せるようになっている。2014年の統計によれば,世界で最も貢献している治療薬100品目について調査すると,約半分の49は米国の会社が開発し,2番目は日本で15,3番目は僅差の14で英国となっている。ただ,薬を生み出したのは日本の会社であるが,病気の治療薬として開発したのは欧米の医療機関が主で,治療薬として対象疾患や症状,用量・用法が研究されてから日本での確認・治験が開始されることが多く,海外と比べて日本で治療ができるのは数年後になる。海外の会社が創った薬ではさらに遅くなる。
これまで私たちは治療の工夫は行ってきたが,薬学との共同で治療薬を開発する体制は十分でなかった。創薬はこれからの日本の医療機関,医師にとって強く社会から要請され,かつ世界に貢献できる業務である。

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