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3学会で異なる入浴中の突然死の要因

No.4774 (2015年10月24日発行) P.54

鈴木秀人 (東京都監察医務院)

福永龍繁 (東京都監察医務院院長)

登録日: 2015-10-24

最終更新日: 2016-10-26

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わが国では入浴に伴う急死例が多いことが知られているが,死亡診断書の死因が様々に記載されることもあり,人口動態統計から実態を把握することは困難である。2012年,入浴事故に関連する3学会(日本救急医学会,日本温泉物理気候医学会,日本法医学会)が合同で研究班を立ち上げ,実態把握と予防対策に関する検討を行った(文献1,2)。
日本救急医学会は非心肺停止例の解析を行った結果,身体所見として軽度意識障害,高体温,頻脈が特徴的に認められ,入浴事故の本態は高温環境曝露による熱中症であるとした。それに対し,日本温泉物理気候医学会による温泉地での調査では高体温の事例は認められず,出浴時の静水圧解除・起立動作による血圧低下が入浴事故の主たる要因と推定された。一方,日本法医学会は剖検事例の解析を行い,(1)直接死因は溺死が6割以上を占めるものの,溺水吸引の少ない事例も存在すること,(2)原因と推定される疾病は約半数の事例に認められるが,外傷が関与した事例や高濃度のエタノールが検出された事例もあることから,浴槽内急死の原因は様々であるとした(文献1,2)。
死亡の機序については3学会で各々調査対象が異なっており,結果にも相違点が認められるが,3学会で総括した結果,入浴中急死には器質的疾患(脳血管障害,急性冠症候群),非器質的疾患(熱中症,血圧低下,アルコールなど)の複数の要因が関与すると結論づけられた(文献1)。

【文献】


1) 厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業:入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究. 2014.
2) 福永龍繁, 他:日温気候物理医会誌. 2014;78(1):13-4.

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