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J-PADガイドラインによるICUでのせん妄管理・予防

No.4773 (2015年10月17日発行) P.53

鶴田良介 (山口大学大学院医学系研究科 救急・総合診療医学分野教授)

登録日: 2015-10-17

最終更新日: 2016-10-26

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『日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン』は,それぞれの頭文字(Japanese-Pain,Agitation,Delirium)をとってJ-PADガイドラインという。本ガイドラインが作成された背景には,(1)痛みの管理,(2)できるだけ浅い鎮静管理,(3)せん妄の評価と予防,(4)多職種連携のチームアプローチ,が挙げられる。ICUの患者はそこにいるだけで苦痛と不安を感じ,一刻も早く鎮静下に置いたほうがよいと長年信じられてきた。「鎮静・鎮痛」は医療従事者が患者に施すものであり,時にその程度の評価もなしに始められてきた。ところが,深い鎮静はICU滞在・入院日数を延長させ,せん妄をもたらすことが判明してきた。
せん妄は不穏とは異なる。せん妄とは,短期間のうちに出現し,変動する認知機能障害である。(1)易刺激性,興奮・錯乱や不穏,幻覚などの症状を示す過活動型(hyperactive)せん妄,(2)注意の低下,不活発,不適切な会話などの症状を示す低活動型(hypoactive)せん妄,(3)両者の特徴を示す混合型(mixed)せん妄,の3つに分類される。
せん妄評価ツールを使用すると,意外にも過活動型が最も頻度が低いということがわかる。患者の痛みや鎮静深度を評価するスケールと合わせて,ICUの医師・看護師でも容易に判定可能なせん妄評価ツールが開発され,その有用性や妥当性が示されてきた。ICUのせん妄は,長期の身体・認知機能障害や死亡と関連している。

【参考】

▼ 日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会:日集中医誌. 2014;21(5):539-79.

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