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双極性障害と大うつ病性障害の DTIによる正確な鑑別の重要性

No.4771 (2015年10月03日発行) P.55

岸本年史 (奈良県立医科大学精神医学教授)

登録日: 2015-10-03

最終更新日: 2016-10-26

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米国精神医学会から発表された診断基準DSM-
5では,DSM-Ⅳまでは大うつ病性障害と気分障害として同一疾患群であった双極性障害が分離され,双極性障害および関連障害群となった。
うつ状態の臨床症状は大うつ病性障害との区別がつかないが,双極性障害は若年で発症し,男女比が1:1と大うつ病性障害とは疫学的にも明らかに異なる疾患である。初発の症状がうつ状態のことも多いが,双極性障害と大うつ病性障害は治療法が異なるので,正確な鑑別が予後に重要である。診断の鍵は躁病/軽躁病エピソードの存在であるが,躁病/軽躁病エピソードを欠くうつ状態を呈する患者に気分安定薬を用いるか,抗うつ薬を投与するかを決定することは難しい。
MRIの拡散テンソル画像(DTI)は,脳内白質の神経線維の微小構造変化について定量することを可能にする撮像手法である。筆者教室の松岡 究らは,DTI-MRIを用いて脳内白質微細構造の差異について検討し,第111回日本精神神経学会(2015年)において発表した。
双極性障害患者では,健常者や大うつ病性障害患者と比較して気分状態とは関係なく,脳梁において有意なfractional anisotropy(FA)値の低下が認められた。年齢と性別によって補正したFA値によって,双極性障害患者と大うつ病性障害患者を79.4%の割合で識別することができた。
FA値の低下はミエリン部位の障害を示唆している。したがって,双極性障害患者において,脳梁におけるグリア細胞の減少を反映しており,死後脳の研究報告とも矛盾しない。識別率が79.4%であるDTIは,両疾患の鑑別マーカーとして有用な方法のひとつである。

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