株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

新生児外科の進歩

No.4761 (2015年07月25日発行) P.54

松藤 凡 (聖路加国際病院小児外科部長)

登録日: 2015-07-25

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本小児外科学会の調査によると,新生児外科疾患全体の死亡率は,1970年代の約50%から2008年には10%以下に低下した。
先天性食道閉鎖は,小児外科の代表的な疾患である。1941年に米国から世界初の手術成功例が報告され,本症の救命率は新生児外科手術の指標とされてきた。死亡率は1964年の60%から,2008年には11%に低下した。治療成績は,出生時体重,先天性心疾患などの重症合併奇形,肺炎などの呼吸器障害に大きく影響される。これらの危険因子がない症例の救命率は99%に達している。また,先天性腸閉鎖の死亡率は,1964年の50%から5%以下に改善した。消化管穿孔症例の死亡率も60%から17%に改善した。小腸穿孔の死亡率も年々改善していたが,2003年をピークに発症数,死亡率が上昇した。これは1000g以下の低出生体重児の救命率が向上し,ハイリスク症例が増加したためと推察される。その後,病態解明と治療法の改善に伴い低下傾向にある。
一方,新生児胃破裂は死亡率の高い疾患であったが,周産期の管理とともに発症数が激減した。臍帯ヘルニアは症例数が減少している。胎児期に診断されることが多く,合併奇形などのため妊娠が継続されない症例もあるものと考えられている。
胸腹裂孔ヘルニア(Bochdalekヘルニア)は,肺の低形成を伴い救命が難しい疾患である。1980年代をピークに死亡率が40%に増加した。これは胎児診断により,重症の肺低形成症例が専門施設へ母体搬送されたためと考えられている。なお,2008年の死亡率は18.2%である。

【参考】

▼ 高松英夫:標準小児外科学. 第6版. 伊藤泰雄, 監. 医学書院, 2012, p4-8.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top