CT撮影時の管電圧は,120kVpや140kVpが標準的に用いられてきた。しかし近年,80kVpや100 kVpといった低電圧撮影が臨床で可能となってきた。これは,近年のCT装置におけるX線管球の最大出力が向上し,低電圧撮影を行っても十分な画質を得られるようになったためである。低電圧撮影を行うことの利点は,(1)造影剤の減量による副作用発症の低下,(2)被ばく線量の低減,(3)留置針径を細径に変更可能,という3点である。
(1)低電圧撮影ではヨード造影剤の造影効果が強くなるため,造影剤量の減量が可能である(文献1)。心臓・血管CTの適応例では,高齢者や腎機能低下者の割合が多い。ヨード造影剤による造影剤腎症は造影剤使用量にも依存するため(文献2),造影剤減量による副作用発症の低下が期待できる。
(2)低電圧撮影ではノイズが上昇するが,コントラスト向上の効果が大きいこと,また逐次近似再構成法を利用してノイズの低減が図られることから,結果的に画質を保ったまま被ばく線量も低減させることが可能である。
(3)造影剤注入速度を低下させることが可能であるため,留置針径を細径にすることも症例によっては可能となり,撮影現場の負担も軽減する。
一方,低電圧撮影は,体格の大きな症例では十分な画質が得られないことがあるが,標準的な日本人の体格であれば,十分に適応可能である。低電圧撮影CTは,より低侵襲なCT検査を可能にする方法である。
1) Kanematsu M, et al:AJR Am J Roentgenol. 2014; 202(1):W106-16.
2) 腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012. [http://www.j-circ.or.jp/guideline /pdf/2012iodine_contrast.pdf]