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筋萎縮性側索硬化症と認知症

No.4758 (2015年07月04日発行) P.57

渡辺保裕 (鳥取大学脳神経内科講師)

中島健二 (鳥取大学脳神経内科教授)

登録日: 2015-07-04

最終更新日: 2016-10-26

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筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は,全身の筋肉が進行性に萎縮する神経変性疾患である。上位および下位運動ニューロンが非可逆的に変性するが,その機序は不明である。大半は孤発性であるが一部に家族集積性を認める。原因遺伝子のCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)が約20年前に発見されて以来,20以上の異なる遺伝子の変異が原因として報告されている。この遺伝子異常を手がかりとして病態解明・治療開発の研究が飛躍的に進んだが,ALSに対する承認薬剤は,1999年からわが国でも使用可能となったリルテックRのみである。
ALSでは感覚障害,自律神経障害,眼球運動障害のいずれも認めないこと,褥瘡ができにくいことが陰性徴候として重視される。さらに認知症を合併しないことも重要な特徴とされた一方で,わが国を中心に明らかな認知症を伴うALS例が報告されてきた(文献1)。近年,ALSと前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)に共通する臨床的・遺伝的・病理的な背景に関する知見が蓄積され,ALSにおいては認知症の合併は稀ではないという認識が一般的となった。
ALSにおける認知症は5~10%,軽度認知障害は32~45%に達する。初期に記銘力障害が前景となるアルツハイマー型認知症に対し,ALSにおける認知障害は失語を中心とした言語の障害と,性格変化や行動異常が主体である。性格変化,行動異常は前頭葉における障害の部位により,自発性,発動性の低下をきたす場合と,脱抑制的・衝動的・反社会的行動を示す場合がある。

【文献】


1) 湯浅亮一:臨神経. 1964;4(9):529-34.

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