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重症筋無力症の治療

No.4755 (2015年06月13日発行) P.50

伊藤 悟 (鳥取大学脳神経内科)

中島健二 (鳥取大学脳神経内科教授)

登録日: 2015-06-13

最終更新日: 2016-10-26

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重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は自己抗体により骨格筋神経筋接合部の障害をきたす疾患であり, 易疲労性や日内・日差変動のある筋力低下症状を特徴とする。
わが国では,2003年に日本神経治療学会と日本神経免疫学会が合同で作成したものが初のガイドラインとなる。その後,2014年には日本神経学会などの4学会と,厚生労働省「難治性疾患克服事業免疫性疾患に関する調査研究」班が合同で,『重症筋無力症診療ガイドライン2014』(文献1)を新たに作成した。
従来のMG治療は胸腺摘除術とステロイド投与がその主軸であり,長期のステロイド投与による副作用でQOLが低下するケースも少なくなかった。そのため新ガイドラインでは,高用量ステロイドの長期投与による副作用の出現を軽減するため,病初期からのカルシニューリン阻害薬併用と必要最小限のステロイドの使用が推奨された。また,全身型MGに対して一般的に行われていた非胸腺腫例での胸腺摘除術についても,十分なエビデンスが出ていないことから,オプションとしての位置づけとなった。
このように,MG治療は患者の長期的QOLを考慮して治療方針を決定していくものに変化してきている。近年では,モノクローナル抗体製剤の有効性も示されてきており,今後のさらなるMG治療の進展が期待される。

【文献】


1) 日本神経学会, 監, 「重症筋無力症診療ガイドライン」作成委員会, 編:重症筋無力症診療ガイドライン2014. 南江堂, 2014.

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