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遺伝性疾患における責任遺伝子解析法の進歩

No.4751 (2015年05月16日発行) P.51

佐藤大介 (北海道大学医学教育推進センター)

有賀 正 (北海道大学小児科教授)

登録日: 2015-05-16

最終更新日: 2016-10-26

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2005年に従来のシークエンサーの解析力をはるかに上回る次世代シークエンサー(NGS)が登場し,メンデル遺伝病の責任遺伝子解析法は一変した。NGSによるエクソーム解析は,ゲノム上のほとんどの遺伝子のエクソン配列をシークエンスし,遺伝子変異の有無を解析するものである。
たとえば,ある遺伝性疾患における複数の症例で共通の遺伝子に病的変異が見出せれば,その遺伝子が原因遺伝子であることを強く示唆できる。この方法で,2010年に同定された稀なメンデル遺伝病であるMirror症候群の責任遺伝子DHODHを皮切りに(文献1),この数年間で従来原因不明であった先天奇形症候群の原因遺伝子が数多く同定されてきている。1981年に新川らが報告し,様々なアプローチでも原因遺伝子の同定が困難であった特異的顔貌および精神発達遅滞を伴う先天異常症候群(歌舞伎症候群)の責任遺伝子MLL2も,2010年にNGS解析で同定された(文献2)。
これまでの原因遺伝子同定は,遺伝性疾患の累積する大家系を用いた染色体上における候補領域の特定や,染色体相互転座などを合併する稀な症例の染色体切断点解析などで行っていたが,NGSの登場によって必ずしも染色体上の位置情報を必要としなくなった。NGSは完全ではないが,稀なメンデル遺伝病を網羅的に解析でき,原因遺伝子の同定方法として非常に強力で効果的な解析方法である。今後のさらなる発展が期待される。

【文献】


1) Ng SB, et al:Nat Genet. 2010;42(1):30-5.
2) Ng SB, et al:Nat Genet. 2010;42(9):790-3.

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