マスギャザリング(mass gathering)とは,日本集団災害医学会では「一定期間,限定された地域において,同一目的で集合した多人数の集団」と定義されている。多人数の定義に関しては,報告者によって様々であり,1000人以上から2万5000人以上と幅広く,一定ではないが,わが国では1000人以上としている。多くのマスギャザリング時に集団災害の発生の危険性や救急患者数の増加が報告されているが,観客数やイベントの種類によってマスギャザリングにおける傷病者の発生率,救急車搬送率,CPA(cardiopulmonary arrest)発生率には幅がある(文献1)。マスギャザリング・イベントに医療支援を展開することにより,救急患者への適切な早期治療の開始や,近隣医療機関の負担軽減にもつながることが期待される。
わが国では1998年の長野オリンピック,2002年のサッカーワールドカップなどのマスギャザリング・イベントにおいて,大規模な医療支援体制を計画・構築してきた(文献2)。近年では2007年に始まった東京マラソンが契機となり,多くの市民マラソン大会が開催されている。これらイベントには数万人に及ぶマスギャザリングの一面のほかに,市民ランナーのCPA症例発生などのリスクも存在しており,救急医療体制の整備が必要である(文献3)。
現在,マスギャザリングのリスクを傷病者発生率や病院搬送症例発生率の視点から類型化し,リスクに応じて推奨される現場救急医療体制を規定する試みが始められている(文献4)。
1) 小井土雄一, 他:医療. 2010;64(11):740-5.
2) 勝見 敦, 他:日集団災医会誌. 2004;9(1):45-51.
3) 石川秀樹:臨スポーツ医. 2009;26(3):289-99.
4) 森村尚登, 他:日集団災医会誌. 2013;18(3):360.