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死後経過時間推定法

No.4748 (2015年04月25日発行) P.58

臼元洋介 (九州大学法医学)

池田典昭 (九州大学法医学教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-26

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法医学において死後経過時間の推定は非常に重要である。推定法として,死斑や体温低下などの物理的な変化,代謝物や酵素活性などの代謝の変化,免疫反応や死後硬直などの物理化学的な変化,腐敗などの細菌学的な変化などを利用する方法が提案されており(文献1),実務上はいくつかの方法を組み合わせて推定している。これらの方法は遺体の死後変化から死後経過時間を推定するため,遺体内外の環境(死因,環境温,湿度など)の影響を受ける。したがって,推定の際には環境因子を考慮することも重要である。
分析環境が整ってきたこともあり,生化学的指標を用いた方法の報告は多いが,実務では正確性と同時に迅速性も求められるため,研究レベルでは有用であっても実際には応用できない方法もある。死斑や死後硬直を指標とする推定法は古くからよく用いられているが,評価に主観が入りやすいため,測色計などの機器を用いて客観的に評価し,推定しようとする報告(文献2,3)がある。
また,最近はCTなどによる死後画像診断がよく行われるようになってきており,死後変化による画像所見の変化も報告(文献4,5)されてきていることから,今後は死後画像を用いた推定法も研究が進むと考えられる。

【文献】


1) Henssge C, et al:Forensic Sci Int. 2007;165(2-3):182-4.
2) Usumoto Y, et al:Leg Med (Tokyo). 2010;12(1):19-22.
3) Vain A, et al:Forensic Sci Int. 1996;79(2):155-61.
4) Ishikawa N, et al:J Forensic Leg Med. 2013;20(8):1075-7.
5) Hyodoh H, et al:Leg Med (Tokyo). 2015;pii:S1344-6223(15)00004-8.

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