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血液生化学検査

No.4924 (2018年09月08日発行) P.55

池田知哉 (大阪市立大学法医学)

石川隆紀 (大阪市立大学法医学教授)

登録日: 2018-09-11

最終更新日: 2018-09-04

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【形態学的検査を基盤とした血液生化学検査の体系的発展は客観的病態評価に有用である】

血液生化学検査は,基本的な形態学検査に加えて,死亡過程における全身状態および代謝などの機能的障害の指標として役立てられている1)。「全身状態の指標」の対象となりうる病態は,脱水,低栄養,代謝異常,炎症,低酸素血症,骨格筋傷害,さらに全身性ストレス反応など多岐に及んでいる。

低栄養,糖尿病などの機能的障害を検査するために,窒素化合物,血清蛋白質,グルコース,脂質やケトン体などの指標は有用である。炎症マーカーとしてのCRPは,死後比較的安定しており,大まかながら臨床基準値を参考にすることができる。また,ウイルスマーカーとして知られているネオプテリンも全身性炎症反応のマーカーとして有用である。エリスロポエチンや一部のホルモンの測定は,低酸素血症の評価に有用である。骨格筋傷害の評価としての血中ミオグロビンは,死後顕著に増加するものの,尿中濃度は骨格筋傷害あるいは横紋筋融解を伴う死因診断に利用可能である。全身性ストレスの指標としてのカテコールアミンの測定は,熱中症,覚せい剤乱用や向精神薬中毒で増加することから,病態解析に重要である。

しかし,死亡過程における病態は症例ごとに異なり,必ずしも臨床基準値を指標に評価すべきではない。このような生化学的検査は,社会的危機管理の観点から「精密な剖検」に含まれるべき法医検査業務の一環として考えるべきものである。

【文献】

1) Ishikawa T, et al:How to Learn about human Life from the Deceased. Medico-legal Consultation and Postmortem Investigation Support Center, 2016.

【解説】

池田知哉,石川隆紀 大阪市立大学法医学 *教授

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