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超急性期脳梗塞治療の変遷

No.4743 (2015年03月21日発行) P.55

青木志郎 (広島大学脳神経内科)

松本昌泰 (広島大学脳神経内科教授)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-10-26

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2005年10月にわが国で経静脈的血栓溶解療法(t-PA静注療法)が開始されてから9年が経過した。症例の蓄積により,0.6mg/kgという日本独自の投与量の安全性と有効性が多数例の検討で示されてきている。さらに,欧州で行われた大規模臨床試験ECASS 3(文献1)の結果を受けて,2012年9月からわが国でもt-PA静注療法の投与可能時間が,発症3時間以内から発症4.5時間以内に延長された。また,当初は投与の禁忌項目であった脳動脈瘤の存在や発症時の痙攣が慎重投与項目となるなど適応は拡大する方向に進んでおり,今後さらなる投与症例数の増加が期待される。ただ,近年急速に増加している新規経口抗凝固薬(NOAC)服用中の患者に対するt-PA静注療法の安全性については十分なデータがそろっていないのが現状であり,NOAC服用からの時間などを考慮し,慎重に適応の可否を決定する必要がある。
このように,t-PA静注療法の有効性が示されてきた一方,内頸動脈や中大脳動脈近位部の閉塞例では再開通率が低いという報告も相次いでおり,その限界も明らかとなってきている。そのような状況の中で,血管内治療による機械的血栓回収療法が,超急性期の脳梗塞治療のもう1つの選択肢として進歩してきた。デバイスとして,2010年にMerciリトリーバル,2011年にPenumbraシステムが認可され,2014年からはSolitaireTM FRの使用も可能となった。現段階では,t-PA静注療法の治療成績を上回るような大規模臨床試験の結果は出ていないが,今後の症例の積み重ねによる検討が注目される。

【文献】


1) Hacke W, et al:N Engl J Med. 2008;359(13): 1317-29.

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