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生体吸収性スキャフォールド

No.4739 (2015年02月21日発行) P.55

上村史朗 (川崎医科大学循環器内科教授)

斎藤能彦 (奈良県立医科大学第1内科教授)

登録日: 2015-02-21

最終更新日: 2016-10-26

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1977年に世界初の冠動脈に対するカテーテル治療が行われてから約40年が経過した。この間,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の技術は,単純なバルーン拡張から,ベアメタルステント,薬剤溶出性ステント(DES)と進化し,最近では年間約30万件の治療が行われている。
しかし,PCIを受けた患者の長期予後を検討したCREDO-Kyoto Registry研究(文献1)によると,DES留置1年以降の再治療は経年的に増え続け,最新のDESでもPCI患者の長期予後は十分に改善されたとは言いがたい。この状況には,DESが内膜新生を過度に抑制することでステントストラットが長期に血管内に露出したり,長期を経過したステント新生内膜に新規の動脈硬化病変が発生することなどが関与していると考えられている。
このようなDESの欠点を補う新しい治療機器,生体吸収性スキャフォールド(BVS)が注目を浴びている。BVSはステント自体が生体に吸収されるポリマーと細胞増殖を抑制する薬剤でつくられている。冠動脈内に留置後,治療急性期には血管のrecoilと新生内膜の増殖を抑制して冠動脈血流を確保し,慢性期にはステント自体が消失することで血栓症のリスクの軽減,血管運動の保持が期待されるもので,既に欧州では実臨床で使用開始されている。BVSが有効な患者背景,抗血小板治療の継続期間など明らかにされるべき課題は残されているが,わが国でも臨床試験が進行しており,将来的に冠動脈疾患患者のPCI治療の一選択肢として期待されている。

【文献】


1) Natsuaki M, et al:Circ Cardiovasc Interv. 2014 ;7(2):168-79.

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