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ヘルシンキ宣言2013改訂版

No.4726 (2014年11月22日発行) P.56

渡邉裕司 (浜松医科大学臨床薬理学・臨床薬理内科教授)

登録日: 2014-11-22

最終更新日: 2016-10-26

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ヘルシンキ宣言は,医師を対象として臨床研究の倫理性を守るための具体的な手続きを明らかにしたものであり,2013年,ブラジル・フォルタレザで開催されたWMA総会において,第9回の改訂が採択された。2014年4月には日本医師会から公式な和訳(文献1)が公開されている。
今回の改訂のポイント(文献2)には,研究に関与した弱者集団の保護の強化,研究参加後に損害を受けた被験者に対する適切な補償と治療の提供,バイオバンクなど研究試料の再利用に関するインフォームド・コンセントに関する言及,被験者に対する研究結果の通知,研究後の取り決めの拡大(試験中に有益であると証明された医学的措置へのアクセスの保証),研究倫理委員会の権限強化,などが挙げられる。さらに序文において,この宣言が主に医師に対して表明されたものであることが明確に記された。また,その構成も以前の,(1)序文,(2)すべての医学研究のための諸原則,(3)治療と結びついた医学研究のための追加原則,の3章構成から12章構成となって内容が具体化され,実際に医学研究や臨床試験を考える際に,ヘルシンキ宣言に挙げられた項目での確認が容易となった。
臨床研究を取り巻く状況は大きく変化しているが,医学の進歩のためには臨床研究が不可欠であることに変わりはない。修正を加えながら,常に最新の「人間を対象とした臨床研究の倫理的規範」を示すヘルシンキ宣言の意義は大きい。

【文献】


1) [http://www.med.or.jp/wma/helsinki08_j.html]
2) 栗原千絵子:臨薬理. 2014;45(2):41-51.

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