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新型うつ病

No.4694 (2014年04月12日発行) P.63

大森哲郎 (徳島大学精神科教授)

登録日: 2014-04-12

最終更新日: 2016-10-26

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休めば回復する普通の疲労感と病気によるぐったりとした疲労感が異なるように,誰にでも生ずる憂うつと病気のうつ病は異なっている。うつ病は,特有の脳機能変化を有する医学的な疾患である。これが基本。しかし両者の区別はときどき難しい。
さらに,精神疾患の症状は,主として心理行動面に出現するため,その表現型は患者の性格,環境要因だけでなく,もっと広く時代や文化の影響を受けやすい。かつてはドクターストップのかからない患者がいたものである。自分の健康を犠牲にしても集団の中での役割を果たすことを優先させたのである。その時代のうつ病と現代のうつ病では,表現型が微妙に違っても不思議ではない。重症例では強い病勢が個別的な表現を許さないから,そのような影響は軽症の時に顕著となる。
現代の軽症例を示す用語として,最近世間で有名になっているのが新型うつ病である。学術用語ではなくマスコミ用語なため,定義があるようでないのが困ったことであるが,「自己中心的な若者が職場では憂うつになるが余暇は楽しく過ごせる」というようなイメージであろうか。軽症うつ病だけでなく職場不適応も含んでいそうなのである。
職場不適応でも最近では臆せず休みを取って遊びに行く人もいるのかもしれないが,一方では自己中心的な若者でもうつ病になることだってある。軽症なら仕事は嫌だが休日はほっとするという段階もある。新型うつ病というあいまいなレッテルを貼るだけでは問題の解決につながらない。丁寧な鑑別診断がやはり必要である。

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