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乳幼児反復性喘鳴(乳児喘息)へのエンドタイプを用いた早期介入

No.4737 (2015年02月07日発行) P.56

井上祐三朗 (千葉大学大学院医学研究院小児病態学)

登録日: 2015-02-07

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

乳幼児反復性喘鳴(乳児喘息)へのエンドタイプを用いた早期介入について,千葉大学大学院・井上祐三朗先生のご教示をお願いします。
【質問者】
吉原重美:獨協医科大学小児科准教授

【A】

わが国では,2歳未満の反復する乳幼児反復性喘鳴を「乳児喘息」と定義しており,乳幼児早期からの吸入ステロイド(inhaled corticosteroids:ICS)を含めた早期介入治療が可能となっています。しかしながら,乳幼児期の喘鳴には多様性があり,反復性喘鳴を呈するすべての乳幼児に,本当に早期介入治療が必要かどうかは明らかではありません。また,低年齢でのICSによる成長抑制は不可逆的であり(文献1),この点においても,安易なICS治療の導入は避ける必要があります。
エンドタイプとは,疾患を病態メカニズムによって分類するサブタイプです。多様な病態が含まれる乳幼児反復性喘鳴をエンドタイプに分類し,気道炎症の慢性化やリモデリングの進行など喘息の進展に関わる病態を反映するエンドタイプが同定できれば,その病態をターゲットとした適切な早期介入治療が可能になると考えられます。
過去の疫学研究からは,特定の気道ウイルス感染に関連した乳幼児反復性喘鳴が知られており,ウイルスに対する応答が発症に関与する反復性喘鳴のエンドタイプの存在が考えられます。
RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)のF蛋白に対するヒト化モノクローナル抗体のパリビズマブは,低出生体重児でRSVによる重症下気道感染症を減少させると同時に,乳幼児期の反復性喘鳴も減少させます(文献2,3)。このようなRSVに関連した乳幼児反復性喘鳴のエンドタイプを生後早期に予想できれば,RSVをターゲットとした介入を行うことで,乳幼児反復性喘鳴そして気管支喘息の発症予防が可能になると考えられます。
また,遺伝因子も,エンドタイプ分類を考える際には重要な要素です。17q21領域のORMDL遺伝子やGSDMB遺伝子の遺伝子多型は,3歳までのライノウイルス(human rhinovirus:HRV)による喘鳴の回数と関連を認めますが,同時にこれらの遺伝子多型は,3歳までにHRVによる喘鳴を認めた児でのみ,6歳での気管支喘息の発症と関連します(文献4)。このことから,17q21領域の遺伝因子とHRV感染という環境因子が影響する乳幼児反復性喘鳴のエンドタイプが存在することが示唆されます。HRVに対する有効な感染予防は確立されていませんが,将来的にはIFN-βの吸入などの介入が可能になるかもしれません。

【文献】


1) Guilbert TW, et al:J Allergy Clin Immunol. 2011; 128(5):956-63. e1-7.
2) Simoes EA, et al:J Allergy Clin Immunol. 2010; 126(2):256-62.
3) Yoshihara S, et al:Pediatrics. 2013;132(5): 811-8.
4) Cal▼▼kan M, et al:N Engl J Med. 2013;368(15): 1398-407.

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