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酸化Mg製剤の薬物動態は?【他剤との相互作用や全身状態,食事の影響の考え方】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.63

大井一弥 (鈴鹿医療科学大学薬学部病態・治療学分野 臨床薬理学研究室教授)

登録日: 2016-04-02

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

薬剤の「適正使用に関するお願い」に関連して,酸化マグネシウム(Mg)製剤の薬物動態についてご教示下さい。腎機能が正常な場合でも,便中排泄量(2.5mg/kg/日)>尿中排泄量(90~100mg/日)(体重40kg以上)の場合,高Mg血症が発症するようですが,高度な便秘があると排泄が阻害されるため高Mg血症が起こるという認識でよろしいのでしょうか。たとえば,高Mg血症の原因として「リチウム治療」があるように,他剤との相互作用による二次的な要因,また全身状態の変動に伴い骨・筋組織に存在していたMg(手元の書籍で体内含有量の97%を占める)ないしは,血漿蛋白と結合していたMgが血中に遊離する可能性は考えられないでしょうか。食事性Mg摂取量の留意の必要性についても教えて下さい。 (神奈川県 O)

【A】

Mgは血管細胞内への過剰なカルシウムの流入を抑制することにより,血管の収縮を弱める作用があります。Mgが欠乏すると血管が拡張し,痙攣などの症状が出現します。元来,Mgは骨に最も多く存在し,全身のMgの50~60%が骨に存在しています。
Mgの生理作用は多岐にわたりますが,酸化Mgや硫酸Mgのように分子型のMgを吸収すると腸管での浸透圧が高まり,水分の吸収が阻害され,腸管内が液状になるとともに,蠕動運動が亢進し,緩下作用が期待できます。Mgの生体内平衡は,腎臓で調節され,過剰であると急速に排泄されます。
腸管吸収については,特殊な輸送体が同定されており,空腸と回腸から吸収されます。一般に緩下剤として用いる酸化Mg製剤の投与量では,高Mg血症は発症しにくく,漫然とした長期連用もしくは大量投与により,腎からの排泄と腸管からの吸収のバランスが保持できない複雑な生理的条件が成立したときに高Mg血症が発症します。
つまり病態,薬の服用状況,さらには豆類や緑黄色野菜の過剰摂取など食事の影響の有無を含めて総合的に判断することが必要です。
仮に,Mgの吸収や代謝に異常が生じていると推察され,Mgの過剰や欠乏時に特徴的な臨床症状を呈していれば,迅速に血清Mg値を測定するべきでしょう。

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