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認知症に対するシロスタゾールの効果はどう期待できますか?

No.4772 (2015年10月10日発行) P.57

猪原匡史 (国立循環器病研究センター脳神経内科医長)

長束一行 (国立循環器病研究センター脳神経内科部長)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2016-12-13

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【Q】

認知症に対するシロスタゾールの効果について,治験が行われているようですが,現在わかっていることや期待される効果,メカニズムを教えて下さい。 (群馬県 E)

【A】

シロスタゾールは,脳梗塞の予防に広く用いられる抗血小板薬です。シロスタゾールは,血栓形成を抑制するとともに,血管を拡張させ脳血流を上昇させる作用があることが知られています。
この脳血流を上昇させる作用は,シロスタゾールが血管平滑筋のホスホジエステラーゼⅢという酵素の働きをブロックし,血管を拡張させることによります。シロスタゾールを服用している軽度~中等度の認知症患者の認知機能低下は,服用していない患者に比べてゆるやかになることから(文献1)(文献2),シロスタゾールが認知症患者の血管に何らかの有益な作用を有すると考えられていました。動物実験の結果,シロスタゾールは血管の壁に沈着するアミロイドβという老廃物の排泄を「血管周囲ドレナージ経路」(文献3) に沿って促進することが明らかになりました(図1)(文献4)。
したがって,シロスタゾールは抗血小板薬として脳梗塞を予防することに加え,血管に直接作用して老廃物の排泄を促進することで,認知症の進行をくいとめることが期待されています(文献5)。

【文献】


1) Ihara M, et al:PLoS One. 2014;9(2):e89516.
2) Arai H, et al:Am J Geriatr Psychiatry. 2009;17(4):353-4.
3) 猪原匡史, 他:細胞工学. 2012;31(10):1113-8.
4) Maki T, et al:Ann Clin Transl Neurol. 2014;1(8):519-33.
5) Saito S, et al:Front Aging Neurosci. 2014;6:290.

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