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胃粘膜黄色腫の病態・発生機序と脂質異常症との関連

No.4756 (2015年06月20日発行) P.65

福嶋敬宜 (自治医科大学医学部病理学教授/ 病理診断部部長)

登録日: 2015-06-20

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

上部内視鏡で萎縮性胃炎によく観察される黄色腫(xanthoma)の病態,発生機序と,脂質異常症との関連をご教示下さい。 (東京都 S)

【A】

胃粘膜黄色腫は,通常は2~5mm大の黄白色調をした扁平な粘膜隆起病変として胃粘膜に認められます。黄色調は脂質に富んだ組織であることを示しており,顕微鏡で観察すると,脂質を貪食したマクロファージ(泡沫組織球とも呼ぶ)が結節状に集簇している像がみられます。
脂質の蓄積ということで,脂質異常症との関連が気になりますが,複数の研究でも,血清中の脂質(総コレステロール,エステル型コレステロール,遊離コレステロール,HDLコレステロール,βリポ蛋白,中性脂肪,遊離脂肪酸,リン脂質,アポ蛋白,過酸化脂質)との相関はなかったとされています(文献1)。一方で,胃粘膜黄色腫の75%が幽門腺領域にみられ,黄色腫近傍胃粘膜には90%で強い萎縮性変化を伴い,腺窩上皮の過形成, 腸上皮化生も高率にみられます(文献1)。さらにポリープやがんの合併頻度が高いとした報告もあり,このような胃粘膜の特徴は,ヘリコバクター・ピロリ(Hp)感染を強く示唆する所見です。Hpが関与しない胃粘膜にも認められることはありますが(文献2),胃粘膜黄色腫細胞の細胞質内にHp抗原を見出したとする報告もあります(文献3,4)。
以上の臨床病理学的な背景を総合すると,胃粘膜黄色腫の本質は炎症状態の持続によって局所的に生じる組織破壊物(免疫細胞や上皮細胞などを含む)を貪食した組織球の集簇です。これらの貪食物が比較的脂質に富んでいるから黄色調を示す,というのが黄色腫の成り立ちの理由であり,脂質異常症との関連はないと考えられます。

【文献】


1) 内藤通孝, 他:日老医誌. 1991;28(5):683-7.
2) Bassullu N, et al:Ann Diagn Pathol. 2013;17 (1):72-4.
3) Hori S, et al:Pathol Int. 1996;46(8):589-93.
4) Isomoto H, et al:Scand J Gastroenterol. 1999; 34(4):346-52.

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