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減量接種による健康被害の法的対応

No.4719 (2014年10月04日発行) P.68

竹中郁夫 (弁護士)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

18歳,女子。百日咳抗体(-)のためワクチン接種を勧められて来院。日本医師会雑誌142巻8号(2013年)1757ページに現行の三種混合ワクチンの0.2mL接種で有効という記事があったが,この減量接種を実施し,健康被害が発生した場合,医薬品副作用被害救済制度は適用されるか。また,同意書は必要か。(栃木県 S)

【A】

医薬品医療機器総合機構は,「医薬品副作用被害救済制度」と「生物由来製品感染等被害救済制度」を持ち,病院・診療所で投薬された医薬品,薬局などで購入した医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や障害などの健康被害について救済給付を行っている。
「法定予防接種」を受けたことによるものである場合は,別に「予防接種健康被害救済制度」という公的救済制度があり,救済対象にはならないが,任意に予防接種を受けた場合は,救済の対象となる。
ただし,「医薬品・生物由来製品の製造販売業者などの損害賠償責任が明らかな場合」,「救命のためにやむをえず通常の使用量を超えて医薬品を使用し,健康被害の発生があらかじめ認識されていたなどの場合」,「医薬品の副作用,生物由来製品を介する感染などにおいて,その健康被害が軽度な場合や請求期限が経過した場合」,「医薬品・生物由来製品を適正に使用していなかった場合」は,「医薬品副作用被害救済制度」と「生物由来製品感染等被害救済制度」の救済給付の対象にはならず,対象除外医薬品による健康被害の場合は,「医薬品副作用被害救済制度」のみが適用されうるという制度設計になっている。
したがって,任意の予防接種は,医薬品を適正に使用していたと認定される必要があり,この点は医療訴訟などでしばしば議論される「当時の医療水準」を満たしていたかどうかというような発想での認定作業が行われることになろう。
いずれにせよ,インフォームドコンセントの形成は,予防接種の施行に限らず必要かつ十分になされなければならず,施行時の医療水準としてしっかりとした評価がなされている医療的介入であること,また万一の場合は,このような救済制度もあることなどを説明しておくことが妥当であろう。
ただ,具体的にどこまで,どのようにインフォームドコンセント形成しておかなければならないかは,事後的にこのような救済制度や医療訴訟の審理の中で吟味されることであるので,事前に類型化することは困難である。
今までの臨床経験に基づいて,自らこのような形で患者や家族とインフォームドコンセント形成しておけば必要十分ではないか。「なぜか,なぜならば」と責任を問われたときもプレゼンテーションが可能な程度に行っておくべきということになる。

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