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禁忌や副作用に関する説明義務

No.4716 (2014年09月13日発行) P.64

竹中郁夫 (弁護士)

登録日: 2014-09-13

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

小児科医の間では「ミノサイクリンは歯牙形成期にある8歳未満の小児に対する投与は原則禁忌である」との認識が一般的と思われるが,ほかの薬剤が使用できない状況で,「歯牙の着色」について説明を行わずに8歳未満の小児に投与した場合,説明義務違反に問われる可能性はあるか。 (高知県 K)

【A】

医師が患者を診療する診療契約については,その法的性質は準委任契約と考えられている。
民法第643条は,「委任は,当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる」と定めているが,法律行為でない診療行為を行うことは委任に準じた準委任とされ,委任契約の規定が準用されると定められている。
民法第645条は,「受任者は,委任者の請求があるときは,いつでも委任事務の処理の状況を報告し,委任が終了した後は,遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない」と定めているが,医師も準委任事務である診療各場面における処理報告を行い,患者の自己決定が関与する場合には,説明義務を尽くした上での同意,いわゆるインフォームドコンセントを形成しながら,診療行為を進めていく責任を負うものと考えられている。
治療行為についても,病状の説明に基づいて治療方法の内容,効果,副作用などについて,インフォームドコンセントを形成しつつ進めていくべきことは現代において常識とされていると言ってよいだろう。
札幌地方裁判所平成19(2007)年11月21日判決は,ステロイド吸入剤を使用中の喘息患者が発作を起こし,治療を検討中,患者がβ刺激剤の吸入剤は心房細動が出ると拒んだが,医師は発作の強さから気管支拡張剤は必要と考えてテオフィリン(テオドール)を投与した症例で,服用後不整脈が出現し,医師に処方すべき薬剤の選択を誤った過失があり,これによって不整脈が悪化したとして患者が債務不履行に基づく損害賠償を求めた事例で,β刺激剤で不整脈が出現した患者にテオフィリン製剤を投与したことの過失は否定したものの,テオドールの副作用として不整脈が生じる可能性があることを説明すべき義務があったにもかかわらず,これを怠ったとして説明義務違反を認めた。
ご質問のミノサイクリンも,使用上の注意に明記されている以上,説明義務違反に問われる可能性は十分にあると言える。

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