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抗精神病薬と抗うつ薬の併用をどう考えるか【抗うつ薬を抗精神病薬に付加したRCTがあるが,大規模かつ長期のRCTが望まれる】

No.4799 (2016年04月16日発行) P.56

渡邊衡一郎 (杏林大学医学部精神神経科学教授)

登録日: 2016-04-16

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

現在,向精神薬の多剤処方を回避すべく,日本精神神経学会では精神科薬物療法研修特別委員会を立ち上げて研修会を開催し,eラーニングを導入しております。この件について,抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬それぞれのカテゴリー中での多剤処方を避ける意味は理解できますが,統合失調症圏の患者に対する抗精神病薬と抗うつ薬との併用は理論的には問題ないのでしょうか。それとも避けるべきでしょうか。
杏林大学・渡邊衡一郎先生のご教示をお願いします。
【質問者】
和田 清:埼玉県立精神医療センター依存症治療研究部長

【A】

統合失調症の治療薬である抗精神病薬は,幻聴や被害妄想など,いわゆる陽性症状には効果を示すものの,やる気のなさ,感情の起伏が少なくなるといった陰性症状や,注意力,判断力の低下などの認知症状には少しの効果しか示さないことが知られています。このために,あらゆる治療法がこの隙間を埋めるのではないかと期待され,活発に研究が行われています。抗うつ薬に関してもこの観点から様々な試みがなされています。
抗うつ薬を抗精神病薬に付加したランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)をまとめたTerevnikovらによる2015年のレビューでは,ミルタザピンとミアンセリンは陰性症状と認知症状に,また,三環系抗うつ薬のイミプラミンやセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin and norepinephrine reuptake inhibitor:SNRI)のデュロキセチンは抑うつ症状に効果を示しました。トラゾドンは薬剤性錐体外路症状を改善しました。他方,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)は効果を示しませんでした。なお,抗うつ薬投与によって精神症状は悪化しなかったとのことです。これはあくまで,抗精神病薬が投与されている状況における付加療法であるためと考えます。ただ,全般としての抗うつ薬付加による効果のエフェクトサイズは大きくありませんでした。
陰性症状や抑うつ症状でなかなか効果がみられないときに抗うつ薬を付加するのも一考でしょうが,治療の初期から積極的に試すものではないかもしれません。今後,良質に計画された大規模かつ長期のRCTが望まれます。
【参考】
▼ Terevnikov V, et al:Int J Neuropsychophar-macol. 2015;18(9):1-14.

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