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尋常性天疱瘡や類天疱瘡でのプレドニゾロン減量の目安と再燃時の対策【順調に抗体価が減少していれば,2週間に1割ずつ内服ステロイド量を減量】

No.4791 (2016年02月20日発行) P.58

青山裕美 (川崎医科大学附属川崎病院皮膚科教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

尋常性天疱瘡や類天疱瘡で,血漿交換,ステロイドパルスなどで苦労して病勢を抑制したにもかかわらず,プレドニゾロン(プレドニンR)減量が早すぎたのか,減量中に再燃して困ることがあります。プレドニゾロン減量の目安,また再燃時どの程度まで再増量すべきかを含めた対策について,川崎医科大学附属川崎病院・青山裕美先生のご教示をお願いします。
【質問者】
多田弥生:帝京大学医学部附属病院皮膚科准教授

【A】

天疱瘡や類天疱瘡は,抗デスモグレイン抗体や抗BP180抗体によって生じる自己免疫性の水疱症です。典型例では,初診時に必ずこれらの自己抗体が血清中に検出され,ステロイド内服治療を行うと病勢(水疱や紅斑の面積)の減弱に並行して自己抗体は減少します。
水疱が消失した頃からステロイドの減量を開始します。その後は,抗体価を測定しながら抗体価が増加しないように内服ステロイド量を減量していくのがよろしいかと思います。順調に抗体価が減っているようであれば,2週間に1割ずつ内服ステロイド量を減量します。頻回の抗体価モニタリングができない場合でも,1カ月に1回は測定することが望ましいと思います。
抗体価が下がらなくても,水疱が再発しなければ内服ステロイドを減量することも可能です。ご質問にあるように,再発を起こしたくない場合は,免疫抑制薬の併用を行うと,よりスムーズにステロイドを減量することができます。この場合は,アザチオプリン,シクロスポリン,ミゾリビンなどを併用します。併用後1カ月で抗体価が減少するようであれば,併用効果ありと判定し内服ステロイドを先に減量します。ステロイドの減量の目標は,プレドニゾロン換算で1日投与量を10mgから5mgに減らすことです。さらに減量する場合も,抗体価を測定しながら増加しないように毎月1mgずつ減量します。抗体価が増加してしまった場合,水疱が再発するまで減量せず投与量を維持します。抗体価が横ばいになったら,また少しずつステロイドを減量します。
水疱が再発した場合は,ステロイド内服量を2倍に増やすのが原則です。しかし,5~10mgで再発した場合,抗体価を下げる程度の免疫抑制療法が必要ならば,プレドニゾロン換算で最低でも20mg以上内服しないと抗体価が下がらないので,治療の仕切り直しが必要になります。すなわち重症度を判定し,初期治療からやり直しになります。軽症の再発であれば,ステロイド投与量をできるだけ減らしたいと希望する患者が多いので,プレドニゾロン換算で0.5mg/kg/日に内服免疫抑制薬を併用することが多いのですが,中等度以上の悪化であれば0.8mg/kg/日以上が必要です。
ステロイドの減量方法については,エビデンスがなくエキスパートオピニオンになりますので,減量の速度は再発しない程度になるべく速く行うのがベストプラクティスであると私は考えています。減量してみなければどの程度の再発が起きるかわかりませんので,再発を予測しながら挑戦していくのがよいでしょう。長期にわたるステロイド投与症例では,感染症,骨粗鬆症,耐糖能異常,高血圧などの副作用に配慮することが必要なことは言うまでもありません。

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