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常位胎盤早期剥離の死胎児娩出方法と輸血療法のポイント

No.4777 (2015年11月14日発行) P.59

板倉敦夫 (順天堂大学産婦人科学教授)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

妊娠31週で,重症妊娠高血圧腎症に起因すると考えられる常位胎盤早期剥離と子宮内胎児死亡をきたした初産婦が搬送になりました。常位胎盤早期剥離の発症は推定6時間前で,子宮は板状硬を呈し,子宮口は堅く閉鎖し,子宮出血は凝固しません。このような場合の死胎児の娩出方法と子宮摘出を回避するための輸血療法のポイントについて,順天堂大学・板倉敦夫先生にご教示頂ければ幸甚です。
【質問者】
村山敬彦:練馬光が丘病院産婦人科科長

【A】

米国の教科書では胎児死亡となった常位胎盤早期剥離は「経腟分娩」と記載されています。しかし,多くのわが国の施設では帝王切開を行っています。一番の理由は,わが国では産科DIC(disseminated intravascular coagulation syndrome:播種性血管内凝固症候群)時の出血量を減らすために補充が必要な凝固因子として,濃縮製剤が利用できない施設が多いためです。
この患者では産科DICが予想されますので,そのまま娩出すると,制御困難な出血が予想されます。そのため,産科DICを改善させてからの娩出が望ましいのですが,新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)では水分負荷が大きく,大量に輸血すると肺水腫のリスクが高くなります。そのため,濃縮製剤であるクリオプレシピテートあるいはフィブリノゲン製剤によって,産科DICを改善させ,その後に児を娩出することが望ましく,分娩中であっても繰り返し補充するなど,十分な産科DIC対策ができれば経腟分娩も可能かもしれません。
また,この疾患は非常に強い腹痛を訴えますが,経腟分娩を遂行するにはさらに何時間も陣痛に耐えて頂く必要があり,無痛分娩のための腰椎穿刺もできません。加えて,通常は人工破膜を行いますが,この内診所見では実施が難しいようです。既に発症からの時間も長く,さらに母体の肝臓・腎臓の機能障害が始まっていると,早期娩出が望ましくなります。
したがって,この患者の経腟分娩を行うことができるのは,早期剥離の経腟分娩に慣れている施設のみと考えます。しかし,このように分娩様式の如何にかかわらず,集学的な周術期管理が必要となり,子宮内胎児死亡となっているので一刻一秒を争う状態ではないことから,この患者はICU・全身麻酔管理ができる施設,できれば経カテーテル動脈塞栓術が緊急でも施行可能な施設で管理することが望ましいと考えます。
濃縮製剤が使用できない場合でも,帝王切開を行う際には,まず20~30単位のFFPを解凍しておき,肺水腫にならない程度までFFPの輸血を行ってから開始することが,出血量減少には有効と考えます。

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