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脳脊髄液漏出症に対する治療

No.4760 (2015年07月18日発行) P.62

佐藤慎哉 (山形大学医学部総合医学教育センター教授)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2021-01-05

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【Q】

頭痛の原因の1つとして脳脊髄液漏出症がありますが,低髄液圧症候群,脳脊髄液減少症との違いについて。どのように診断を進めるか,どのような治療法があるかについても併せて,山形大学・佐藤慎哉先生のご教示をお願いします。
【質問者】
三國信啓:札幌医科大学医学部脳神経外科学教授

【A】

(1)脳脊髄液漏出症,(2)低髄液圧症候群,(3)脳脊髄液減少症は,何らかの理由で髄液腔に存在する脳脊髄液が減少し,脳神経,血管,硬膜などに存在する痛覚受容体が刺激され,起立性頭痛を主体とする症状を呈する疾患群をそれぞれ別の観点から命名したものと考えることができます。
(1)ビタミンA不足による髄液産生量の低下などの特殊な例を除き,多くの脳脊髄液の減少は脳脊髄液の漏出が原因と考えられることから命名されたのが脳脊髄液漏出症で,ICD-10にも採用されています。
(2)一方,髄液量の減少というよりも髄液圧の低下に重きを置いているのが低髄液圧症候群です。国際頭痛分類ではこの観点を採用しています。髄液の漏出があると,結果として低髄液圧になることが多いので,脳脊髄液漏出症と低髄液圧症候群は,大部分がオーバーラップしていると考えられます。
(3)脳脊髄液減少症は,上記2つの病態に加えて,直接的な髄液漏出所見や低髄液圧も確認できないが,類似の症状を呈する病態を含んだ概念です。概念としてはありえますが,治療前に髄液量が減少していることを評価する方法が現時点で未確立であるため,この用語の使用に関しては議論があります。
治療に関しては,いずれも,まず2週間程度の安静臥床と補液などの水分補給を行うことが推奨されています。このような保存的療法で症状が改善しない場合には,硬膜外自家血注入療法(いわゆるブラッドパッチ)が行われます。以前は保険適用外の手技でしたが,現在は,厚生労働省研究班の診断基準で脳脊髄液漏出症と診断された患者さんに関しては,先進医療として認められるようになりました。漏出部位が明らかな場合に,漏出部位を含む領域に自家血を注入して漏出部を閉鎖する方法は,理にかなった方法であると考えられます。
また,保険適用外の手技ですが,一部の施設から自家血に代わり,生理食塩水を硬膜外に注入する方法も報告されています。

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