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TPPだけではない、医療も交渉対象の経済連携協定 [お茶の水だより]

No.4794 (2016年03月12日発行) P.11

登録日: 2016-03-12

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▼環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の条約承認を求める関連11法案が8日、閣議決定され、国会に提出された。政府は今国会での承認を目指す。
▼TPPによる医療への影響の懸念は根強いが、内閣府は「TPPで日本の保健医療が崩壊することはない」としている。市場アクセス制限の禁止は、公的医療保険を含む社会保障関連のサービスには適用外。緩和した規制の再強化を禁じる「ラチェット条項」は、保健・社会保障・社会保険等の公共性の高い「社会事業サービス」は対象外だ。新薬特許保護期間も、日本の現行制度と同じ8年間で決着した。
▼ただ、日米両国間の交換文書では、両政府はあらゆる分野で再協議の用意があることを確認しており、新薬特許保護期間の延長をはじめ、いずれ再交渉への動きが出てくると懸念する声もある。
▼各国の規制緩和を通じて自由貿易を促す多国間協定は、TPP以外にも交渉が進められている。その1つが、日米欧など20以上の国・地域が参加する「新サービス貿易協定」(TiSA)だ。交渉対象は「モノ以外のすべての貿易」。医療をはじめとする公共性の高い事業サービスや保険も含まれている。日本がTPP交渉に参加する1カ月前の2013年6月から協定締結に向けた「本格交渉」段階に移っている。
▼外務省は「わが国にとってサービス貿易は『攻めの分野』」と経済効果への期待を強調しているが、詳しい内容は公開されていない。秘密性の高さを含めてTPPと性質が非常に似ているため、日医総研の坂口一樹研究員は、TiSAを「TPPに次いで米国が放ってきた“第二の矢”」と評し、警戒を促している。
▼TPP承認の行方だけでなく、日本の医療に影響を及ぼすかもしれない、別の自由貿易協定の存在も、頭の隅に置いておく必要があるだろう。

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