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ドラマから考える - 超高齢社会の究極の解決法とは [お茶の水だより]

No.4774 (2015年10月24日発行) P.9

登録日: 2015-10-24

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▼NHKで毎週土曜日に放映中のドラマ「破裂」が面白い。老化した心臓を若返らせる「夢の治療法」で名を遂げようと野望を抱く心臓外科医・香村と異能の官僚・佐久間のせめぎ合いを描くものだ。実は、夢の治療法には心機能が劇的に回復した後、心臓が破裂し突然死を起こすという副作用があるのだが、佐久間はそこに目をつけ、高齢者が「寝付かず苦しまずに死ねる」治療法を利用して、「超高齢社会の究極の解決」を図ろうとする。
▼佐久間は言う。「来るべき超高齢社会を前に無為無策でいたら、この国は滅びます。日本では延命治療の是非も問わずに医療が無軌道に進歩し、寝たきり老人が多い。いかに多くの老人がぽっくり逝きたいと願っているか知っていますか?」─その狙いは第一に医療費の抑制であり、現場の医師がドラマを観たら、反発を覚えるだろう。しかし、「このままではどこかで頭打ちになる」という不安は、医療に関わる誰もが感じていることなのではないか。
▼「“延命治療やり放題”の日本も、TPPで大きく変わる」という指摘がある。米国の民間保険会社に国民皆保険が脅かされるという懸念だ。そのTPPも先頃大筋合意に至り、国は「そんな事態にはならない」と強調している。医療費の無駄の削減については長年議論されてきているが、終末期医療に手をつけなければ財政が破綻するというコンセンサスには至っていない。しかし、将来的に「ではどこを切るか」というステージに入る可能性は否定できない。
▼処方箋の1つが地域包括ケアであろう。そして当事者である現場の医師は、国民にとって良い医療を追求し、より納得・満足できる高齢者医療、終末期医療にすることが、結果として医療費節減につながるという“理想”を諦めてはいけない。

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