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診療報酬による機能分化の誘導は得策ではない [お茶の水だより]

No.4718 (2014年09月27日発行) P.8

登録日: 2014-09-27

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▼2014年度診療報酬改定で設けられた主な施設基準の経過措置が9月末で終了する。改めて言うまでもなく、14年度改定最大の目玉は「2025年モデル」構築に向けた7対1病床の大幅削減だ。14年度改定の影響を調査するため大阪府保険医協会が府下の医療機関に対し、7月に実施したアンケート(221施設が回答)では、7対1届出病院の約9割が「継続」する意向で、要件の「自宅等退院患者割合75%」は約95%が「すでに満たしている」と回答。一方、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」について現状で満たしているのは約75%で、今後は一定数の病院が施設基準を満たすため、重症患者の受け入れを積極的に進める予定であることも分かった。
▼亜急性期入院医療管理料の廃止に伴い新設された「地域包括ケア病棟」の算定状況はあまり動きがなく、約6割が届出を「未定」と回答している。「主治医機能」を評価する「地域包括診療料」の算定については「きわめて少ない」状態だ。厚労省は“モデル的な医療機関”に算定してもらえればいいとの構えだが、「24時間開局薬局」や「全処方薬の把握」「在宅への取組」などがネックとなり、現場の反応は鈍い。
▼今回の調査結果は1つの指標に過ぎないが、そこから窺えるのは医療機関が非営利ながらあくまでも経営体、という側面を備えていることだ。今回の7対1の要件厳格化のような経営面の大きなマイナス要因にも“企業努力”で耐えしのぐ術を身につけている。つまり、診療報酬上で「あるべき姿」を押しつけようとしても、医療機関は思惑通りに動かないことが改めて浮き彫りになったと言えるだろう。
▼しかし、医療機関のそうした“頑張り”には無理が生じることも予想される。7対1病棟がより重症患者を受け入れる体制を取る一方で、亜急性期や慢性期病棟の多くがハードルの上がった在宅復帰率を満たすことになれば、それは今まで入院が必要だった患者の一部が受け皿の病棟ではなく、施設か自宅に戻されていることを示唆しているのではないか。
▼14年度改定に関する調査が出始め、7対1病床を2年間で9万床削減するという財務省の目標には遠く及ばない可能性が高まった。次期改定では7対1のさらなる要件厳格化が予想されるが、医療保険財政と地域医療への影響というどちらの視点から眺めても、診療報酬での機能分化の誘導ではあまり効果を期待できないばかりか、副作用があるという現実を踏まえ、議論が展開されることを期待したい。

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