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16年度改定、在宅医療で評価分かれる - 「約2億円の減収」「妥当な改定」との声 [全国在支診連絡会シンポジウム]

No.4795 (2016年03月19日発行) P.9

登録日: 2016-03-19

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(概要) 全国在支診連絡会が第3回全国大会を開催した。16年度診療報酬改定を巡るシンポジウムでは、大半が厳しいという見方だった前回14年度改定と異なり、評価が分かれた。

全国在宅療養支援診療所連絡会は12日、13日の両日、第3回全国大会を開催した。13日に行われた2016年度診療報酬改定を巡るシンポジウムでは、「約2億円の減収になるかもしれない」との声が上がる一方、「妥当な改定」との指摘も出た。「厳しい」との見方が大半だった前回改定と比べ、医療機関によって評価が分かれる改定となったようだ。

●小野宏志氏「重症患者の患者負担増加」
シンポでは、静岡県浜松市で年間250人以上の看取り実績を持つ診療所を開業する小野宏志氏(写真、坂の上ファミリークリニック)が現状について説明した。医学管理料の「同一日同一建物の場合」で大幅引下げが行われた前回改定後の2年間について、「同じ施設にほぼ毎日訪問、あるいは同一日に複数の医師が訪問するなど、施設にとっては迷惑、医療従事者には労力の無駄使いともいえる状況だった」と強調。「(前回改定)以前は患者や家族からもっと心のこもった言葉を掛けてもらっていた気がする。在宅医療への不信感が強まったのではないか」と述べた。
その上で今改定について、休日の往診加算新設などを評価する一方、重症度に応じた評価の導入により「重症患者の患者負担が増加する」と懸念。また、重症患者割合や施設に居住する患者数が経営に影響すると指摘し、改定の影響について「当院は年間約2億円の減収になるかもしれない」と試算した。

●佐々木淳氏「チーム医療で負担を軽減」
一方、「前回改定は衝撃だったが今回は妥当な改定」と評価したのは、都内を中心に9つの機能強化型在宅療養支援診療所を運営する佐々木淳氏(写真、医療法人社団悠翔会)。「(改定の影響で)14年3月から4月の1カ月で2500万円の減収になったが、居宅、施設を問わず患者受け入れを積極的に進め、10月には単月黒字に転換した」と説明した。
佐々木氏は、改定の影響などによる環境の変化に対応するにはチーム医療が重要と指摘。「悠翔会の診療所の運営コストは1時間3万3000円。居宅診療は1時間に1人でペイするが、施設の集団診療では移動時間込みで5人診療しなくては赤字になる。そのため施設看護師や薬剤師など多職種協働による役割分担の見直しを行い、在宅医の負担を40%から20%にまで引き下げ、診療時間を圧縮した」と取り組みの成果を紹介した。

●離島・僻地への細かい配慮が課題
シンポではこのほか、沖縄県宮古島市の泰川恵吾氏(ドクターゴン診療所)が講演。離島・僻地における在宅医療の問題点を指摘した。フェリーやジェットスキーなどを使って訪問診療を行っていた同市の大神島が療養担当規則で対応可能とする「16km以内」の範囲外に当たるとして、13年に九州厚生局から個別指導を受け、「過去1年分の診療報酬2300万円の返還請求があった」と紹介。「16km以内の地域に分院を開院して対応したが、保険診療再開までの4カ月間の住民の不満は大きかった」と述べた。
こうした現状を踏まえ泰川氏は、「問題は都市部を基準にした保険診療計画と監査基準にある。高齢過疎化する離島・僻地の地域医療を支えるには風習などを含めた地域特異性に細かく配慮すべき」と訴えた。

【記者の眼】16年度改定のキーワードの1つは「重症患者割合」だろう。一般病棟入院基本料だけでなく、在宅医療の医学管理料でもその視点が導入され、重症患者の評価が引き上げられた。重症患者割合が在宅の収益を左右する大きな要因となりそうだ。(T)

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