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【識者の眼】「かかりつけ医機能報告制度が意味するものとは?(後)」草場鉄周

No.5239 (2024年09月21日発行) P.68

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2024-09-03

最終更新日: 2024-09-03

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前回の本稿(No.5233)では、かかりつけ医機能報告制度が日本で初めて医療政策の柱に「かかりつけ医機能」という表現で、プライマリ・ケアが組み込まれる方向性につながる意義を説明した。次に、かかりつけ医機能を支える総合診療専門医の役割や、かかりつけ医機能に関する研修が今後の医師養成に与える影響を概説していく。

議論の整理では、かかりつけ医機能を有する医療機関の多様なモデルが示されており、そこではかかりつけ医機能を支援する病院・診療所が明記され、地域の医療機関を包括的に支援し、かかりつけ医機能を積極的に担う医療機関を増やす役割を果たすよう期待されている。そして、具体的に果たすべき機能として「複数医師が常勤、休日・夜間対応を実施、24時間体制の在宅医療を実施、困難な在宅医療にも対応、地域の在宅医療をサポート、後方支援病床を確保、介護施設との連携、地域連携・多職種連携を日常的に実施、学生・研修医・リカレント教育等の教育活動等」と例示されている。

これは診療報酬上は強化型在支診に期待される機能でもあり、医療制度では「在宅医療において積極的な役割を担う医療機関」に合致するだろう。そして、日本専門医機構で養成する総合診療専門医は、まさにこうした機能を果たすべく育成されている専門医である。これまで、総合診療専門医に対して医療制度上で期待される役割は明確でなかったが、役割の1つとしてこうした病院・診療所での活躍が期待されることは明白であろう。

最後に、本制度ではかかりつけ医機能の確保に向けた研修の実施も明記された。今まで日本医師会のかかりつけ医機能研修制度はあったが、かかりつけ医機能と直接関連する応用研修が10時間程度と短く、実地研修も地域での医療保健活動を現状追認するだけという課題があった。今回は座学研修(知識)の内容として「幅広い診療領域への対応に関する内容」と「地域連携・多職種連携等に関する内容」が含まれること、さらには実地研修(経験)の内容として、在宅医療や幅広い診療領域の患者の診療等が含まれることが明記されたことは画期的である。

日本では地域の医療機関でプライマリ・ケアを担うにあたり、再研修して知識や技術を高める公的な制度はなく、特定の専門領域の経験しか持たない医師でもフリーパスで診療することが可能であった。今回の制度はもちろん義務的なものではないが、地域でプライマリ・ケアを担うにあたっては一定の再研修を必要とするというメッセージになるだろう。これは、プライマリ・ケア診療の質を保証するという医療界や国が国民に果たすべき責任にもつながる大切な一歩でもある。

以上、2回にわたり本制度の意義を解説し、医療界に対して潜在的に持ちうる影響を解説してきた。とは言え、制度は機能するかがすべてであり、機能しなければ誰にも使われないものとして忘れられることもめずらしくない。国はもちろんだが、我々医療に携わる者も本制度を国民にアピールし、大いに活用していくことが求められる。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療

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