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生殖補助医療法案で議論 - 第三者型と夫婦型の生殖補助医療を法制化へ [日本生殖医学会学術講演会]

No.4729 (2014年12月13日発行) P.7

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-11-18

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【概要】生殖補助医療(ART)の公的ルールを定める「特定生殖補助医療法案」が自民党で検討されている。第三者を介するARTに加えて、夫婦間のARTも法制化する方向だ。


古川俊治参院議員(自民党「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」座長、医師、弁護士)が5日、日本生殖医学会のシンポジウムで講演し、法案の概要と今後の国会審議について講演した。
法案は、夫と妻以外の第三者からの精子・卵子の提供を容認し、「出産した女性が子の母」「生殖補助医療に同意した夫が子の父」とした。代理懐胎は、子宮欠損など明らかに懐胎能力を欠く場合に限定して認める。実施医療機関は指定制で、利益の授受は禁止。代理懐胎で生まれた子の親子関係の法整備、生まれてくる子の出自を知る権利は検討事項とした。一方で、チーム内の異論を反映し、代理懐胎全面禁止の修正案と、出自を知る権利を認める修正案の作成も今後予定している。
古川議員は党議拘束を外して審議する方針を示したほか、「国会日程が逼迫する現状で、相応の国会審議が必要な本法案が審議入りするには超党派の合意が不可欠」と述べ、法案の国会提出に向けARTの超党派議連結成を検討していることを明かした。
夫婦間のART、登録医療機関は手挙げ方式
また古川議員は、夫婦間のARTについても安全性への懸念から法制化すべきとの意見が国会内にあることを紹介し、現在検討中の法制度(別掲)も説明した。それによると、厚生労働省が実施医療機関の指針を作成し、それに基づき、全国で1つ指定される学術団体が具体的な登録基準を作成。登録医療機関は手挙げ方式で、基準に合致すれば医療機関は学術団体から認証マークを付与され、それを表示できる。登録医療機関は毎年、実施状況を学術団体に報告。これを学術団体が国にも報告する。ただ、学術団体に登録しなくてもARTを実施できる「非常にゆるい法制度」だという。ARTの実施登録は現在、日本産科婦人科学会が行っているが、法案の学術団体について「国の規制を受けることが前提なので、新設することを想定」と説明した。
シンポでは、日本生殖医学会の前理事長、吉村泰典氏が夫婦間のARTの法制化について「なぜ規制が必要なのか。まずは第三者を介したARTの法制化を決めてほしい」と疑問を提示した。
これに対し古川議員は、「正直に言うと、私自身は夫婦間のARTの法制化には前向きではない。しかし、国会で法律を成立させるには多くの議員の合意が必要で、ARTの包括的な規制があったほうが国会を通過しやすいという政治的な配慮がある」と理解を求め、第三者関与型の法案と夫婦型の法案を分離して取り扱う可能性もあるとした。
古川議員は次期国会での法案提出を目指す考え。

【記者の眼】第三者型ARTの法整備は、2003年に厚生科学審議会が提言して以来、実現していない。これは、票を持たない未来の子どもを守る法整備の難しさを表しているとも言える。次期国会ではぜひ審議入りしてほしい。(N)

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