表皮真皮接着に関与する蛋白質をコードする遺伝子の異常により,表皮真皮接着が脆弱となり,出生時から生涯にわたり軽微な外力で皮膚に水疱,びらんの形成を繰り返す遺伝性疾患である。患者数は国内1000~2000人程度の稀少疾患で,指定難病である。
生下時あるいは新生児期に,外力が加わる部位に水疱形成を繰り返すことで疑う。新生児ヘルペス,色素失調症等を鑑別し,皮膚生検により診断する。
原因遺伝子は20以上報告されているが,水疱形成の深さによって三大病型に分類される。表皮基底細胞内に水疱を形成する単純型(約40%で,そのほとんどがケラチン5または14の遺伝子異常による),表皮細胞と基底板の間に水疱を形成する接合部型(約10%),基底板下の真皮内に水疱を形成する栄養障害型(約50%でⅦ型コラーゲンの遺伝子異常による),がある。さらに,原因遺伝子や遺伝子変異の様式の違いにより細分類されているが,軽症のものから致死型のものまで重症度は様々で,病型診断は重要である。病型診断には水疱辺縁部から生検した皮膚を用いて,蛍光抗体染色による基底膜部構成蛋白のマッピングを行う。また,必要に応じて遺伝子検査を行う。遺伝子検査は保険適用となっている。皮膚の電子顕微鏡検査も有用である。
根治的な治療はなく対症療法を行うが,病型によって方針が異なる。手足に水疱が限局する限局単純型では症状は軽微であり,水疱を穿刺し内容液を排出後,ゲンタシンⓇ軟膏(ゲンタマイシン硫酸塩)を塗布する。また,四肢,体幹部にも水疱が出没する汎発単純型や汎発栄養障害型など中等症以上の皮膚症状がある場合は,メピレックスⓇライトなどの創傷被覆材によるびらん部,瘢痕部の被覆を行う。全身に水疱びらんがあり瘢痕形成が著明な汎発重症劣性栄養障害型は貧血,栄養障害,食道狭窄などに対する管理が必要で,皮膚は創傷被覆材による処置を行うが,培養表皮細胞シートの移植も考慮する。
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