伝染性紅斑(erythema infectiosum)は,1本鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19(human parvovirus B19,以下B19)感染により生じる小児の感染症である。潜伏期間は約2週間,軽い感冒様前駆症状に引き続き皮疹が生じる。特別な治療はなく,対症療法を行う。成人例では浮腫,関節痛など症状が多彩となり,膠原病との鑑別が必要となるケースもある。B19感染症として,溶血性貧血患者における無形性発作,妊婦に感染した際の胎児水腫,免疫不全患者に生じる骨髄不全に注意する必要がある。
伝染性紅斑は定点報告対象(5類感染症)であり,指定届出機関は週ごとに保健所に届け出る。小児に多く発症し,リンゴ病と呼ばれる。軽い感冒様前駆症状のあとに,顔面に平手打ち様の深紅色紅斑がみられ,口囲蒼白を伴う。顔面に皮疹が出現し,1~2日後に上腕伸側や臀部大腿外側に網目状の紅斑が現れる。顔面は7~10日,四肢は4~5日で色素沈着を残さずに消失する。成人例では関節痛が出現し,皮疹は小児でみられるような定型的なものではなく,下肢の浮腫などがみられることがある。
B19感染症の注意すべき疾患として,妊婦がB19に感染すると胎児水腫となることがあり注意を要する。また,赤血球寿命が短縮している溶血性貧血患者がB19に感染すると,無形性発作により高度の貧血を生じることがある。さらに,移植患者を含む免疫不全状態の患者では骨髄不全を引き起こすことがあり注意を要する1)。
B19に対する血中IgM抗体価は感染1週間後から上昇する。2~3週間後に血中IgG抗体価が上昇し,血中IgM抗体価は低下する。血中IgM抗体価の検出,ペア血清による血中IgG抗体価の上昇により確定診断が可能となる。PCR法によるB19DNAの検出は,IgM抗体価上昇と併せ急性期の診断では有用であるが,感染後半年~1年間持続的に検出される場合もあり注意を要する2)。なお保険が適用されるのは,紅斑が出現している15歳以上の成人について,B19感染が強く疑われ,IgM型ウイルス抗体価を測定した場合である。
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