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【識者の眼】「医療事故調査報告書は公表・公開してはならない」小田原良治

No.5195 (2023年11月18日発行) P.59

小田原良治 (日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)

登録日: 2023-10-24

最終更新日: 2023-10-24

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医療事故調査・支援センターの機能を受託している日本医療安全調査機構がこっそりと、医療事故調査報告書公表の準備をしているらしい。

医療事故調査制度は、WHOドラフトガイドラインにいう「学習を目的としたシステム」としてつくられた制度であり、非懲罰性・秘匿性・独立性が必要とされている。医療法においても第三章「医療安全の確保」に位置づけられ、同制度が専ら医療安全の制度であることが謳われている。院内調査のセンター報告に際しては、当該医療事故に係る医療従事者等の識別ができないように加工する(他の情報との照合によっても識別できないようにする)義務が課されており、非常に厳格な秘匿化処理が要求されている。そもそも、院内調査報告書の公表を行ってはならないのである。

センター調査報告書も当該病院等の管理者及び遺族にのみ報告するものであり、医療法第6条の21で関係者の守秘義務が課され、同86条第3項で刑罰が規定されている。医政局長通知(2015年5月8日)においても「本制度の目的は医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではないため、センターは、個別の調査報告書及びセンター調査の内部資料については、法的義務のない開示請求に応じないこと」と明示されているのである。

本年3月31日開催の中央医療事故調査等支援団体等連絡協議会において、制度創設に携わった委員からの質問によって、日本医療安全調査機構が、「院内調査報告書」「センター調査報告書」の第三者への公表を水面下で検討していることが明らかになった。日本医療安全調査機構の行為は医療事故調査制度そのものの根幹を揺るがす行為である。質問に対する日本医療安全調査機構の回答は、まさに、第三者公表を前提に、公表に持っていくための方法論を検討していると思わせるような内容であった。さらに、本年9月4日、日本医療安全調査機構再発防止委員会の下に、「データー公表」を検討するための作業部会が設置されたとのことである。日本医療安全調査機構は、法令違反を承知の上で医療事故調査制度の根幹を破壊する行動をおこなっていることが確実である。

9月26日、新型コロナワクチン接種後死亡事例の院内調査報告書が法令に違反し、公開された。この公開を受けて、訴訟のみではなく刑事告訴にまで至ったようである。ミランダルールにも反し、人権を無視した暴挙と言うべきであろう。「second victim」の発生につながりかねない。法令違反の調査報告書公表行為が刑事告訴を惹起したことについて日本医療安全調査機構関係者や今回の事故調査委員会委員長はじめ各委員の責任は重い。

小田原良治(日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)[日本医療安全調査機構][秘匿性]

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