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てんかん[私の治療]

No.5188 (2023年09月30日発行) P.55

松本理器 (神戸大学大学院医学研究科脳神経内科学分野教授)

登録日: 2023-10-01

最終更新日: 2023-09-26

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  • てんかんは,大脳の神経細胞が過剰興奮する性質を獲得し,一過性の症状であるてんかん発作が反復性に起こる慢性の脳の病気で,有病率が約100人に1人のcommon diseaseである。超高齢社会となり,小児・若年発症に加えて,脳卒中,認知症,頭部外傷などで神経細胞が障害され,高齢で発症する例が増えている。

    ▶診断のポイント

    発作の目撃情報などを含む詳細な病歴聴取,脳波,MRIなどに基づき,過剰興奮が脳のある一部分から始まる「焦点発作(焦点てんかん)」か,初めから脳全体(両側性)に広がる「全般発作(全般てんかん)」かを診断する。焦点発作では,局所の間代発作(けいれん)だけでなく,意識減損(無応答),動作停止,一点凝視,自動症(口をもぐもぐ動かす,舌なめずり,手のまさぐり)などが出現することが多い(焦点意識減損発作)。全般発作には,強直間代発作(全身けいれん),ミオクロニー発作,欠神発作などが含まれる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    焦点発作と全般発作の分類から,抗てんかん薬を選択する。単剤で少量から開始し,緩徐に増量する。抗てんかん薬2~3種類で発作が消失しない場合は,薬剤抵抗性と判断される。約3割のてんかん患者は薬剤抵抗性であり,そう判断された場合は,漫然と内科治療を継続せずに,てんかん専門医に紹介し,診断の見直しや外科治療(てんかん焦点切除術や緩和治療)の適応などを検討することが重要となる。

    以下,併存病態での方針を記載する。

    【ポリファーマシーの患者】

    相互作用がないイーケプラ(レベチラセタム)か,臨床的に問題となる相互作用がないビムパット(ラコサミド)やフィコンパ(ペランパネル水和物)を第一選択薬として使用してもよい。

    【薬疹歴(特に抗てんかん薬)を有する患者】

    テグレトール(カルバマゼピン)は皮疹リスクが高めであることから,薬疹歴のある患者では,皮疹リスクが低いイーケプラ,ビムパット,フィコンパ,マイスタン(クロバザム)が推奨される。

    【妊娠可能年齢の女性】

    バルプロ酸ナトリウム(デパケン等)は二分脊椎やIQ低下のリスクが知られることから,催奇形性の低いイーケプラ,ラミクタール(ラモトリギン)が広く用いられる。

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