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【識者の眼】「敗血症の抗菌療法アップデート」近藤 豊

No.5190 (2023年10月14日発行) P.59

近藤 豊 (順天堂大学医学部附属浦安病院高度救命救急センター先任准教授)

登録日: 2023-09-19

最終更新日: 2023-09-19

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敗血症の抗菌療法はその予後を改善させ、敗血症治療の中でも確立された治療法の1つである。そのため適切な抗菌療法を選択することが重要であるが、耐性菌の出現が問題となっている現在、新しい抗菌薬も登場しており、また抗菌薬の投与期間、投与量、投与方法など、その知見は日々アップデートされている。

2021年に米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会が合同で策定した「敗血症診療国際ガイドライン2021」(Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021、以下SSCG2021)1)2)が公表されたが、抗菌療法にも多くのアップデートが認められる。

SSCG2021の中でも、とりわけβラクタム系抗菌薬の投与時間の延長は目を引く事項である。元来、敗血症では循環動態が安定しないことから間欠投与により血中濃度が不安定となる問題が指摘されていた。現在のわが国では抗菌薬を30分間から1時間程度かけて投与する間欠投与がほとんどであるが、PK/PD理論の観点から時間依存性のβラクタム系抗菌薬を持続もしくは投与時間を延長するとその有効性が高くなると考えられていた。これらの背景から多くのエビデンスが積み重ねられ、現在ではβラクタム系抗菌薬の投与時間の延長が抗菌薬の目標血中濃度達成率を上げ、敗血症患者の臨床的治癒率を高めると考えられている3)

そのため敗血症の抗菌療法においてはβラクタム系抗菌薬の投与時間を延長することを考慮するが、投与時間延長の方法は1回を3時間以上かけて投与する方法と24時間の持続投与がある。さらに敗血症では過大腎排泄(augmented renal clearance)がしばしば起こり、抗菌薬が有効血中濃度に達しないことに対する懸念も見受けられる。βラクタム系抗菌薬では治療安全域が広いことなどから薬物血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)が行われてこなかったが、将来的にはTDMにより有効血中濃度を担保する抗菌療法が広まる可能性がある。今後も抗菌療法のアップデートから目が離せない。

【文献】

1)Evans L, et al:Crit Care Med. 2021;49(11):e1063-143.

2)Evans L, et al:Intensive Care Med. 2021;47(11):1181-247.

3)Kondo Y, et al:J Intensive Care. 2020;8:77.

近藤 豊(順天堂大学医学部附属浦安病院高度救命救急センター先任准教授)[SSCG2021]敗血症の最新トピックス

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