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癜風[私の治療]

No.5186 (2023年09月16日発行) P.46

佐藤友隆 (帝京大学ちば総合医療センター皮膚科教授)

登録日: 2023-09-15

最終更新日: 2023-09-12

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  • 癜風(pityriasis versicolor)は皮膚脂腺分泌の多い前胸部や上背部などの脂漏部位に生じるマラセチア属真菌の慢性感染症である1)

    ▶診断のポイント

    境界明瞭で,孤立性や融合傾向のある粃糠疹様の鱗屑を伴う褐色斑または脱色素斑が脂漏部位である上部体幹や頸部,腹部に広がり,四肢末梢には分布しない。診断にはKOH直接鏡検が必須である。また近年,様々な注射や外用免疫抑制薬の進歩に伴いdysbiosisが生じ,臨床的に見逃しやすい感染症となっており,注意が必要である2)。まず癜風を疑うことから始まる。病変部を鑷子などで摩擦してカンナ削り様の鱗屑を誘発し(evoked scale sing),その鱗屑を十分に採取してKOH処理し,顕微鏡で短い菌糸と酵母を確認する。「ショートパスタとミートボール」と表現される菌糸と出芽酵母の確認が大切である。

    【鑑別疾患】

    尋常性白斑,単純性粃糠疹,ジベルバラ色粃糠疹,炎症後色素沈着,脂漏性皮膚炎,接触皮膚炎,貨幣状湿疹,アトピー性皮膚炎,乾癬,黒色表皮腫,伝染性膿痂疹,溶連菌感染症などが挙がる。原疾患の増悪と見間違えやすい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    真菌は水を必要として活動性が上昇するため,湿度の高い季節に多い。癜風では病変に菌糸を認めることが特徴であるが,菌糸形存在の病因は未解明である。マラセチアは脂質要求性の高いヒトの皮膚常在酵母様真菌2)で,人種や地域によって菌数や構成菌種が異なる。わが国での癜風に関与する菌種は主にM. globosaと考えられている。10歳代後半から若者に多いが,全年齢に生じうる。温帯地域では,温暖な環境を訪れた後に生じることが多い。つまり,湿度のコントロールと菌数を減らすことが治療方針の骨格である。外用抗真菌薬を用いる際には病巣よりも広く外用する。マラセチア毛包炎を合併して丘疹が消失しない場合には,短期間の内服抗真菌薬併用を考慮する。難治例では治療による菌陰性後も色調がしばらく残ることがあり,積極的に治療する。

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