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【識者の眼】「COVID-19の流行真っ只中! 世間との情報ギャップにも粛々と対応」薬師寺泰匡

No.5182 (2023年08月19日発行) P.59

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2023-08-04

最終更新日: 2023-08-04

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8月1日付で岡山県のコロナ対策の医療提供体制フェーズが1段階上げられた。当院はこれまで2床の病床確保を依頼されていたが、6床に増えることになる。もともと一般病床は31床しかないため、他の診療への影響が懸念される。7月に入ってから感染者が増え、下旬には常時3〜5名程度のCOVID-19患者が入院していた。確保病床などあってないようなものである。

行政がやっていた入院調整もなくなり、救急搬送においてはコロナ合併や発熱の場合、搬入先の選定が困難になりつつある。以前あったような、院内のスペースが埋まったため救急車を患者ごと病院前で待機させたり、救急車内で診察をしたりする状況が近づいている。流行の立ち上がりが比較的遅い岡山でこのような状況であるので、流行地では相当な逼迫具合なのではないか。

重症化する人は減ったが、ホテル療養がなくなった分、病院への負荷は増えていることも医療逼迫に拍車をかけている。そして、職員への感染の広がりはやはり早い。おそらく5日間の自宅療養としている施設が多いのではないかと思うが、家族が順に感染するなどで、職場復帰が遅れることもある。また、当院では院内保育所の保育士が次々感染し、保育所の運営ができなくなるギリギリのところに追い込まれた。保育所が運営できなければ勤務ができないスタッフも出てくる。直接的な影響もそうだが、間接的な影響も甚大である。近日中に病院機能の制限を余儀なくされる場面が出てくるのではないかと考えている。これが基幹病院の救急外来で起こると、地域への影響は大きい。

医療現場としてはこのような状況であるが、一般的にはコロナ感染したところでほぼ無症状であったり、軽症で済んだりする人も多く、感染したほうが気も楽という空気さえ醸成されていることは気がかりである。マイノリティにしては中等症以上の人の数が多く、医療提供体制の維持を困難にする程度に重症化する、非常に闘いにくい敵になってしまった。これが定常状態と言わんばかりに、マスコミが医療の状況を取り上げることも少なくなった。救急受け入れ困難時に発動される東京ルールの件数は現状7日間移動平均150件程度で推移しているが、200件を超えたり、搬送が遅れて死亡したりということが実際におこらなければ報道されることはなかろう。

どちらかと言うと、社会全体の流れは感染対策としては完全に逆風状態であり、現実的に我々にできることは、ひたすらにベッドコントロールを促進し、日々なんとか帰ることができそうな患者に、多少無理してでも退院を促して、次の患者の受け入れをしていくことである。正直なところ解決方法が見出せずにいるが、これから大事なことは、地域で情報共有をすることである。報道から得られる情報だけではなく、実際の現場の状況を共有し、地域一丸となり支え合いながら乗り切りたい。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[医療逼迫][情報共有]

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