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ひきこもり[私の治療]

No.5180 (2023年08月05日発行) P.45

斎藤 環 (筑波大学大学院社会精神保健学分野教授)

登録日: 2023-08-02

最終更新日: 2023-08-02

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  • 「ひきこもり」は診断名や臨床単位ではなく,「不登校」などと同様に,1つの「状態(condition)」を指す言葉である。厚生労働省研究班は,その状態を「①6カ月以上社会参加していない,②非精神病性の現象である,③外出していても対人関係がない場合はひきこもりと考える」1)と定義した。内閣府の調査結果から,日本では全世代にわたり100万人以上の人がひきこもっている可能性が示唆された。ひきこもり期間の長期化と,当事者や家族の高齢化も深刻な問題である2)

    ▶診断のポイント

    ひきこもりは診断的には「発達障害」や「パーソナリティ障害」と誤診されやすいが,生活歴を慎重に聴取すれば鑑別はそれほど困難ではない。長期のひきこもり状態から二次的に精神症状が生じる場合があり,その主なものとして,対人恐怖,強迫行為,うつ気分,被害妄想,家庭内暴力などがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ひきこもりは一義的には疾患ではないため,治療は広義の支援の一部ということになる。医師が関わることの意義は,発達障害や統合失調症などの精神障害を鑑別すること,二次的に生じた精神症状の治療,精神療法的な関わり,そして家族相談である。厚生労働省のガイドライン1)によれば,治療的支援としては,①家族支援,②個人療法(精神療法と薬物治療),③集団療法,④ソーシャルワーク,の4段階がある。

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