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進行性家族性肝内胆汁うっ滞症[私の治療]

No.5178 (2023年07月22日発行) P.52

近藤宏樹 (近畿大学奈良病院小児科准教授)

登録日: 2023-07-19

最終更新日: 2023-07-18

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  • 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(progressive familial intrahepatic cholestasis:PFIC)は,乳児期に発症する遺伝性肝内胆汁うっ滞症で,常染色体劣性遺伝形式をとる。病型は原因遺伝子によりPFIC1~5まで知られており,原因遺伝子とコードする蛋白は,PFIC1がATP8B1,FIC1(familial intrahepatic cholestasis 1),PFIC2がABCB11,BSEP(bile salt export pump),PFIC3がABCB4,MDR3(multi drug resistance 3 P-glycoprotein),PFIC4がTJP2,TJP2(tight junction protein 2),PFIC5がNR1H4,FXR(farnesoid X receptor),である。
    PFIC3を除き,血清直接ビリルビン,総胆汁酸およびAST・ALTの高値,γ-GTP値は正常または軽度高値であることが特徴である。症状はいずれも乳児期から慢性肝内胆汁うっ滞による肝脾腫や著明な瘙痒感を呈して進行性の経過をとるが,PFIC1では下痢,膵機能不全,難聴など肝外症状を合併するのに対し,PFIC2~4は発現が肝臓に限局するため,障害臓器は肝臓が主体である。時に肝細胞癌を発症することが知られている1)2)。近年,新たなPFIC疾患候補遺伝子が続々と報告されている。

    ▶診断のポイント

    黄疸や白色便を呈する疾患では,まず胆道閉鎖症を鑑別する。胆道閉鎖症を否定された疾患群には,PFICのほか,肝細胞の成熟遅延や肝内胆管の減少などの発生異常,種々の代謝異常症や感染症に大別される。これら原因不明の胆汁うっ滞症には予後不良の疾患が多く存在しているため,遺伝子検査や病理組織検査,胆汁酸分析などの特殊検査がしばしば必要となる。これらの窓口を一本化し,より簡便かつ迅速に実施するため「小児期発症の胆汁うっ滞性肝疾患を対象とした多施設前向きレジストリ研究(CIRCLe)」3)によるシステム運用を開始した。また,「乳児黄疸ネット」4)に症例相談の窓口を設置し,非専門医の相談に応じつつCIRCLeとも連動させている。以下,本稿ではPFICの中で多くを占めるPFIC1,2について概説する。

    PFIC1は,乳児期から遷延性黄疸として発症し,肝脾腫,著明な瘙痒感,成長障害,肝不全へと進行する1)2)。FIC1は,肝臓のほか,腎臓,小腸,膵臓,蝸牛有毛細胞,膀胱,胃でも発現しているため,肝外症状として下痢や膵炎,難聴をきたすこともある。血清直接ビリルビン,総胆汁酸およびAST・ALTが高値を呈するが,血清コレステロール,γ-GTP値は上昇しない1)2)。肝組織では,胆汁うっ滞が小葉間胆管よりも毛細胆管でみられ,電子顕微鏡では毛細胆管内にByler’s bileと呼ばれる粗雑な胆汁の顆粒が認められる(PFIC2では胆汁は無構造である)1)2)

    PFIC2ではBSEPは肝細胞にのみ発現するため肝外症状をきたさないが,肝不全への進行は早く,肝細胞癌を発症する例もある1)2)。血清直接ビリルビン,総胆汁酸およびAST・ALTが高値を呈するが,γ-GTP値は上昇しない。肝組織では,巨細胞性肝炎が特徴的とされ,早期より肝硬変像を呈する1)2)

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