2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症が5類へ変更となり、感染者に対して行動制限や入院勧告など行政による強い処置を講じることがなくなった。一方で新型コロナウイルスの病態に変化があったわけかではなく、医療機関は感染対策などの対応を急激に変えられていないところが多いかと思われる。また、行政が関与していた受診・入院調整は他疾患と同様に病診連携で行うようになった。一方で、少子高齢化が進む日本1)において第8次医療計画に合わせて行われている地域医療構想により、急性期病床は減少する見込みである2)。そのため、新型コロナウイルスだけでなく敗血症をはじめとした他の疾患の患者の受け入れ・適応に応じた入院の判断がより難しくなってくる3)4)。
では、今後の救急医療で議論が必要になってくる部分はどこであろうか。大きくわけて、患者の入口と出口になる。
まず入口に関してみると、救急医療機関には多様な受け入れ方があるが、特に救命救急センターは、主に重症を受け入れている病院や、重症から軽症まで幅広く受け入れている病院など、様々である。地域の実情もふまえた上で十分に検討が必要であるが、重症度や専門性の高い疾患に応じた役割分担、それによる受け入れ体制の整備の議論は要すると思われる。消防や開業医との今まで以上の連携も鍵である。
出口に関しては、幅広く受け入れている病院が主ではあるが、診断を行い疾患に応じた重症度への転院を早期に進める体制整備も必要ではないかと考える。
少子高齢化やベッドの減床、それに新型コロナウイルス感染症を経験し、より救急医療が複雑化する可能性があるが、どの地域の方も十分な医療を提供できるような体制を、より議論していく必要がある。
【文献】
1)統計ダッシュボード公式サイト. https://dashboard.e-stat.go.jp/
2)厚生労働省:第8次医療計画等に関する検討会.
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_127276_00005.html
3)GrapfToChart:グラフで見る福井県の救急出動件数.
https://graphtochart.com/japan/fukui-no-of-dispatches-of-ambulances.php
4)総務省:報道資料「令和4年中の救急出動件数等(速報値)」の公表.(2023年3月31日)
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/230331_kyuuki_1.pdf
狩野謙一(福井県立病院救命救急センター)[少子高齢化][地域医療構想][敗血症の最新トピックス㊷]