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■NEWS ジェネリック産業構造見直しで会議体設置へ─医薬品安定供給有識者検討会が報告書案を大筋で了承

No.5173 (2023年06月17日発行) P.70

登録日: 2023-06-09

最終更新日: 2023-06-09

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小林化工、日医工など一部の後発医薬品(ジェネリック医薬品)企業の不祥事に端を発した医薬品の供給不安や、欧米では承認されている医薬品が国内で承認されないドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスが顕在化している状況を踏まえ、医薬品の迅速・安定供給実現のための方策を検討してきた厚生労働省の有識者検討会(座長:遠藤久夫学習院大経済学部教授)は6月6日、事務局が提示した報告書案について議論し、大筋で了承した。報告書は座長預かりで文言を一部修正し、近く公表される。

報告書案は、「安定供給の確保」「創薬力の強化」「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消」などについて課題を整理し対策の方向性を示すにとどめ、具体的な対策の議論は政府内の関係会議に委ねる格好となっている。

■「少量多品目生産」などの産業構造見直しを

安定供給確保については、「少量多品目生産」といった後発品産業特有の産業構造を見直す必要があるとの方向性を示し、後発品産業のあるべき姿を策定するため新たに会議体を設置し速やかに検討に着手すべきとした。

創薬力強化については、長期収載品の収益に依存する研究開発型企業に対し「特許期間中の新薬の売上で研究開発費の回収を行うビジネスモデル」への転換を促すため、薬価制度の見直しが必要と指摘。ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消についても、革新的医薬品を国内に迅速導入した場合の薬価上の評価などが必要とした。具体的な薬価制度改革の議論は中医協で行うことになる。

■「過度な薬価差の偏在是正」も求める

報告書案はこのほか、「総価取引」など流通上の問題を改善するため、流通改善ガイドラインを改訂するとともに、「過度な薬価差の偏在の是正」に向けた方策を検討すべきとしている。

厚労省は、各会議体での検討状況をフォローアップするため有識者検討会を継続させる方針だ。

■政府内の調整難航で開催延期

報告書取りまとめの議論は当初、5月23日に行う予定だったが、対策の方向性の記載を巡って政府内の調整が難航したため、開催前日に急遽中止が決まった。厚労省の担当官は「対策の方向性はいろいろな影響があるため、多方面と調整させていただいた」としている。

6日の有識者検討会に出席した伊佐進一厚労副大臣は「急なスケジュール変更も様々あったが、真剣な議論を積み重ねていただいたことに心より感謝する。加藤厚労相も(有識者検討会に)非常に関心を持たれ、何度も事務方と意見交換を重ねてきたのを目の前で見てきた」と述べ、委員の労をねぎらった。

【関連情報】
医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会 報告書(案)(厚生労働省ウェブサイト)

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